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すべては乗員の快適な移動のために! トヨタ・グランエースのメカニズムに迫る (3/3ページ)

すべては乗員の快適な移動のために! トヨタ・グランエースのメカニズムに迫る

BODY 高級ミニバンにふさわしい静粛性と走行安定性を実現

 グランエースは海外仕様のハイエースと一部の構造を共有しながら、乗用ユースに対応するために専用設計されている。2019年に新型となった海外仕様のハイエースは、TNGAの設計思想に基づいて開発されたボディを採用し、フロントノーズを持つスタイルを特徴としている。日本におけるハイエースは、商品などを運ぶ配送車のイメージが強い。しかし、海外では多人数を乗せて移動するコミューターとして使われることが多い。

 そこで新型ハイエースの開発にあたり、ドライバーだけでなく2列目以降に乗るパッセンジャーの快適性を高め、静粛性や乗り心地を向上させるために、ボディやシャシーを新設計した。そして、その設計開始の時点で、さらに快適で高級なミニバンのような存在として、グランエースも同時進行で開発された。

 そのため、グランエースはベースとなったハイエース同様、左右にスライドドアを持つセミボンネットタイプで、駆動方式はFR。エンジンは2.8Lディーゼルターボを採用。3列または4列シートのインテリアや高級感のあるエクステリアともに専用のデザインとなっている。そして、そのうえで、さらに上質な乗り味を実現するために、サスペンションなどはグランエース専用のセッティングとなっているのだ。

 多人数乗車ができるハイクラスミニバンは、ドライバーにとっては操縦安定性に優れ、運転がしやすいクルマでなければならないと同時に、後席乗員の快適性の高さも要求される。人を乗せ、心地よく移動するための高級車である以上、乗り心地のよさや高い静粛性も必要となるだろう。

 そのためには、まずすべての基本となる「ボディ」をしっかりとしたものにすることが重要だ。ボディサイズが大きくなれば、走行中の車体の前後・上下・左右の揺れも大きくなる。また、ミニバンのような箱形ボディでは、走行中に生じる車体のねじれも発生しやすい。

 そこで、まずボディの基礎となるプラットフォームのアンダーボディ骨格は、前後・左右方向のクロスメンバーやサイドメンバーを、よりストレートに近いレイアウトで組み合わせる構造とした。アッパーボディは、B/C/Dの3カ所のピラーをアンダーボディのサイドメンバーとつなぎ、さらにルーフのリインフォースに繋げることで、それぞれの部位で環状骨格構造を形成するレイアウトとしている。

 そのほか、アッパーボディではフロントウインドウとリヤクオーターウインドウに高剛性ウレタン接着剤を使用し、さらにフロントドア、スライドドア、バックドアといった開口部には、スポット溶接と構造用接着剤を組み合わせてパネル同士の結合力を高めている。

 こうした基本骨格での剛性確保に加え、乗り心地を向上させるために、サスペンションを構成するパーツの各取り付け部分を中心に補強を施している。走行中に路面からの入力がボディに伝わる着力点は、ボディがねじれるなど剛性が低いと、入力分以上の大きな動きになり、フリクションや振動の発生原因になったりする。サスペンションをより正確に作動させることが、乗り心地の向上につながるため、グランエースではサスペンションパーツの取り付け点剛性を高めている。

 フロントサスペンションまわりは、サスペンションタワーを後方のダッシュパネルと溶接することにより直接結合し、さらに通常はダッシュパネル側に配置されるダッシュカウルを、サスペンションタワー側にも接続することで剛材の一部として利用している。下まわりでは、サスペンションメンバーを閉断面形状とすることで、ボディへの取り付け点数を増やすなどして剛性を確保。ロアアームの正確な動きをサポートする構造とした。

 リヤサスペンションまわりでは、アッパーアーム、ロアコントロールアーム、ラテラルリンクのボディ側取り付け点それぞれにブラケットを配置。ブラケットはクロスメンバーやサイドフレームといった骨材に連結する構造としている。

 上質な乗り心地とともにグランエースに必要なのが車室内の静粛性だ。箱形ボディということもあり、車室内での音の共鳴・共振が発生しやすいこともあるが、ディーゼルエンジンを搭載しているため、とくにフロント方向からの騒音・振動を抑え込むことに注力されている。

 エンジンルームと車室を仕切るダッシュパネルは、エンジン側にノイズを吸収する吸音材を配置し、車室側にはカウルパネル上端部まで覆う形でインナーサイレンサを設置。さらにロードノイズやエンジンノイズを低減させる効果のあるサンドイッチ鋼板(制振材)を配置している。また、エンジンノイズはボンネットを通してフロントウインドウまわりからも車室内に侵入するが、これを抑制するためにボンネットフードの裏側とカウル部分にもサイレンサを配置している。

 走行中のタイヤの回転などによって発生するロードノイズ対策としては、フロントフェンダー、リヤホイールハウスに吸音ライナーを設置。またフロントフェンダー内にはエンジンルームやフロントグリル付近から侵入する騒音を低減するエプロンシールを配置している。

 アッパーボディでは、各ピラーやルーフフレームの中空部分に発泡ウレタンを埋め込み、またリヤホイールハウスとインナーパネルはウレタンフォームによって空間断面をふさぐことで、空気内を伝わる音を遮断。発泡ウレタンやウレタンフォームを用いることで、高い遮音性を実現している。

 グランエースのようなミニバン形状のボディであっても、ボディ全体の空気抵抗を低減することは、騒音抑制のほか操縦安定性や燃費性能の向上につながる。そこで、フロアの下側にアンダーカバーを設置した。フロントバンパー下からボディ前半部はほぼフルカバーとし、スペアタイヤハウスやリヤフェンダーにもアンダーカバーを装着。さらに一部のアンダーカバーには、整流効果のあるエアロスタビライジングフィンを設定している。

 こうしたボディ各部をグランエース専用設計することにより、クルマとしての基本性能を高めながら、ハイクラスミニバンにふさわしい優れた操縦安定性や快適性、静粛性を実現しているのだ。

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