この記事をまとめると
◾️中国製EVの販売台数が、EVカテゴリーで世界トップクラスになりつつある
◾️中国製EVは東南アジアや南米などに広く進出しており、さらにはヨーロッパでも廉価なEVとして消費者に受け入れられている
◾️中国製EVのヒットに対し、EUなどの一部の国と地域は反発を示している
中国製EVの躍進とそれをめぐる各国の対応
日本市場でも注目されているのが、中国BYD(比亜迪汽車)。2023年10月から12月期におけるBEV(バッテリー電気自動車)の世界販売台数で首位になっている、まさに世界的なBEVのトップブランドである。
日本ではまだまだこれからBYDの本格攻勢が始まろうとしているが、すでにタイではあっという間にBEV販売でトップシェアとなり、すでにインドネシア市場にも進出している。東南アジアだけではなく、南米などにも広く進出を果たした。つい最近では、メキシコに工場建設を模索しているとの報道もあった。メキシコへの工場立地を検討している先に見えるのはもちろんアメリカ市場である。
そのため、アメリカの自動車業界や政府がこの報道に過敏に反応しているとの情報もあり、大統領候補のトランプ氏は、報道ベースでは、「アメリカ以外からアメリカ国内に入ってくるBEVには100%関税をかける」と発言しているようである。
アメリカより過敏に、BYDをはじめとした中国系BEVに反応しているのが西ヨーロッパ諸国。あえてEU(欧州連合)としなかったのは、2024年に入りBYDがハンガリーに欧州で初のNEV(新エネルギー車)の工場建設を発表したとの報道があるからだ。
つまり、中国メーカー製BEVに対して、EU諸国で一致した見解はないようで、筆者には、自動車産業の盛んな西ヨーロッパ諸国は警戒しているものの、東ヨーロッパは工場建設のニュースなどを見れば、それほど中国メーカーに過敏な反応は見せていないように見える。
2024年3月上旬の報道では、EUは中国のBEVメーカーに対し、中国政府が違法な金融支援を行っていることが確認できたとして、EU域内に輸入される中国製BEVへ追加関税を課す可能性があるとしていた。
当初2035年以降はBEVを含むNEV以外の新車販売を禁止するとしていたEU(いまは2035年以降もICE[内燃機関]車の販売継続を認めている)。「日本車潰し」などともいわれるように、「ヨーロッパ復権」のためもあってか、NEV普及に前のめりになっているとEUの動きを筆者は見ている。確かに欧州車でもBEVは多く見かけるのだが、そのほとんどはプレミアムブランドなどとも呼ばれる高級車であり、日本国内では1000万円を超えることがザラだ。
そんななか、普及価格帯の中国製BEVがEU域内でも出まわるようになり、これがそれほど抵抗なく、西ヨーロッパの消費者にも受け入れられているというのである。
聞くところによると、欧州ブランド系BEVとはいえそれを構成する部品の多くで中国製パーツが使われており、作れば作るほど中国の部品メーカーを利することになるとの話も出ているようだ。
そんなこともあってか、EU、とくに自動車産業の盛んな西ヨーロッパ諸国では、うがった見方をすれば「中国製BEV排斥」に近いイメージのようなものを感じる報道が目立っているように感じている。