
この記事をまとめると
■ニコンと三菱ふそうトラック・バスが共同で車載カメラを開発
■望遠レンズと広角レンズを一体化させた革新的な車載カメラだ
■それぞれのレンズが捉えた被写体でも映像素子に入る光軸が同一になる
遠方と周辺を同時に撮影!
光学機器メーカーのニコンと三菱ふそうトラック・バスが、革新的な車載カメラを開発した。近年の車両には、安全装置や運転支援装置などのセンサーとして、カメラが採用されているものが多い。ミリ波レーダーなどとは違って人や物体を映像として認識し、それを画像処理システムにデータとして送り出す役割をもつ。より正確な情報を捉えるためには、なくてはならない存在といえよう。
かつて、自動運転技術の開発が行われようとしたときにネックになるといわれたのが、道路上の人、車両、標識、信号、建物などといったもの自体の存在や、それらが発する情報の検知である。これらを自動運転車両が認識するには、それらにもその存在、形状、発信される情報などを知らせるための、何らかの仕組みが必要とされていた。ところが、カメラと映像解析技術が飛躍的に進歩したことで、カメラが捉える映像だけでも当該車両が正確にまわりの情報を得られるようになったのだ。
ただ、カメラのレンズは捉えられる画角が焦点距離によって決定する。いい換えれば、広い画角(広角)と狭い画角(望遠)が必要であれば、焦点距離の異なるレンズが複数必要になってくるということだ。これをひとつのレンズ機構で兼ねさせるためには、ズームレンズという焦点距離が変化するタイプのものを、用いなければならない。この場合、
・レンズの枚数が複数必要になるから暗い画像が捉えにくくなる
・レンズを前後に動かすので、長いレンズが必要になる
などとなるために、カメラを大型化せざるをえない。
薄さが求められるスマートフォンであれば、焦点距離が異なるレンズを別々に複数装着し、必要に応じたものを選択して使用するといった方式を採用しているものもある。一方、車載用カメラは、運転の障害にならないように小型化しなければならない。ゆえに、必要な画角を確保することが優先されることになり、これまでは遠くの情報の読み取り能力が十分ではなかったといわれている。
今回、両社が開発したカメラは望遠レンズと広角レンズを一体化させたというものである。口でいうのは簡単だが、技術的には相当高度なものだといえよう。その中身は公表されていないが、たとえば中央部に望遠レンズを配してその周囲を広角レンズで囲み、それによって発生する歪みをコンピュータで補正するなどといった方法が考えられる。いずれにせよ、相当に革新的なものといえよう。
このレンズが採用されたことにより、焦点の異なるレンズがそれぞれに捉えた被写体でも、映像素子に入る光軸が同一になる。いい換えれば、観測地点が変わることで発生するずれがなくなるので、視差が発生しないということだ。そのため、それぞれのレンズが捉えた被写体を違うものと誤認せず、同一のものだと判断できるようになるのである。
また、望遠レンズと広角レンズが一体化されたことで、車輌に装着するカメラの台数を抑えるなど、コストの削減にも貢献すると考えられよう。自動運転は機械が周りの情報を収集・分析し、車輌の動きを判断することになる。安全を考えれば誤認の確立は下げなければならないし、普及を目指すならコスト削減は不可欠だ。こういった技術の進歩が、完全自動運転の実現に貢献することは間違いない。