
この記事をまとめると
■大阪・関西万博の会場内にてEVバスが稼働している
■走行中給電機能を装備しており路面に埋めたコイルから電力を得ている
■走行中給電機能は自動運転レベル4との相性がいい
万博の会場にて夢のEVバスが稼働中
大阪・関西万博「EXPO2025」が注目度を高めている。開幕前は批判的な報道も多く、開幕直後も運営の問題が指摘されることもあったが、万博ならではのエクスペリエンスが来場者からは高く評価されているという。
そんな大阪万博には、モビリティの未来を体感するイベントという側面もある。たとえば、来場者が利用する移動用バスはEVであるのはもちろん、走行中給電機能を備えている。
EVの運用において課題とされているのが充電時間であり、バッテリー搭載量によって航続距離が制限されること。しかし、路面に埋め込んだ装置などから給電を受けることができれば、航続距離の問題はクリアされるし、搭載するバッテリーも最小限で済むためコストダウンが期待できる。まさにEVにおける夢のテクノロジーが走行中給電機能なのだ。
万博の会場内外を走行しているEVバスが採用している仕組みは、電磁誘導のコイル式。路面と車体の双方にコイルが設けられ、路面の給電コイルに電気を流すことで車体側のコイルに送電されるというものだ。これは、スマートフォンのワイヤレス充電(Qi方式)と同じ仕組みだ。
ただし、走行中のワイヤレス充電ではクルマの側が移動するため、大量の給電コイルを道路の下に埋め込んでおく必要がある。車体が動くために、ひとつひとつのコイルからクルマに送り込める電力はわずかではあるが、それが連続することで車体としては走行に十分な電力供給を受けることができるというわけだ。
一見すると、道路にコイルが埋め込まれていることはわからないため、魔法のように思えるが、大容量の非接触充電システムを大量に埋め込んでいると理解すれば、走行中給電という仕組みは非常に大がかりであることが理解できるだろう。
それなりの初期コストはかかるし、メンテナンスも必要となる。ただし、車体側のバッテリーを最小限にすることができることはコストダウン要因となりえる。バスのようにルートが決まっており、なおかつ車体の台数も多い公共交通との相性はよいといえる。
また、会場を走るEVバスには自動運転テクノロジーも採用されているが、走行中給電システムは自動運転とのマッチングにも優れている。とくに決まったルートを無人で走る自動運転レベル4との相性は抜群といえる。
自然と走行エリアが制限されるし、万が一ルートを外れても給電が止まるために車両は停止することになるからだ。
その意味では未来の自動運転バスは、走行中給電を前提とした交通機関になる可能性は十分にある。もっとも、道路に給電コイルを埋め込むコストに見合うだけの利用者が見込めるエリア(おそらく都市部に限定される)でなければビジネスとして成立させるのは難しいかもしれないが。
未来の公共交通をイメージさせる走行中給電EVバスが運用されているという点を見ても、大阪万博はクルマ好きも注目すべきイベントといえそうだ。