
この記事をまとめると
■ポルシェ911のおすすめ世代を解説
■初代ナローは覚悟と整備環境が必要で964は旧さと実用性のバランスが取れている
■水冷モデルは高性能と快適性を備えるが最新モデルでは妬みも背負う
ハズレがないだけに選択も悩ましい
ポルシェ911がほしい、となったら、なにを基準に選べばいいのでしょうか。スタイル? それとも性能? いやいやリセールバリューも見逃せないぞ、とさまざまな軸があるはず。はじめて911を名乗った初代から空冷最後の993、あるいは最新のレーシーモデルGT3まで、考えはじめたらキリがありません。選びかたのガイダンスなるものは得てして独善になりがちですが、911選びは独善と主観で進めなければいつまでたっても終わりません。
ナロー(901/1964〜1977)
ちょっと911のことをかじると、まずは初代911、いわゆるナローのことも気になるはず。なんとなれば、都会で「ちょい古ポルシェ」に乗っているのはサマになるし、ちょい古界隈でマウントポジションがとれることを夢想してしまうから(笑)。とはいえ、いくらか正気が残っていれば、旧車ゆえのメンテナンスや走る際の手間暇が後ろ髪を引っぱるはず。
とにかく、いまの時代にナローに乗ろうと思ったら、優秀なメカニックはもちろん、ご自身でパーツの調達ができるくらいの知見がほしいもの。なにせ、最後期でも50年近く前のモデルですから、消耗パーツをはじめ各所が新車当時とはまったく違っているのが前提です。
よく、「フラットシックスは気筒ごとにバラせるから、エンジンの修理も大丈夫だよ」とか「昔のポルシェは部品精度、品質ともに最高だし」などと訳知り顔でほざく輩がいますが、ウソとはいわないまでも甘ったるい。身代を捧げる覚悟まではいりませんが、生半可な覚悟では後悔と特大の鉄くずしか残りません。
それでも、ナローは当然ながら原初の911、すなわちポルシェ博士のフィロソフィがパンパンに詰まった名車。軽量で俊敏なボディ、(きちんと整備されていれば)緻密で獰猛なエンジンフィール、そして現行モデルには望むべくもないシンプルで美しいスタイル、いずれもナローでしか味わえない極上のテイスト。
「きつい覚悟をすればするほど得られるものは大きい」。このことに納得できれば、ナローはいちばんのオススメ911ではあります。
964(1989〜1993)
911独特のフロッグアイをもった最終モデル、またティプトロニックやパワステといった現代的なデバイスが備わることでも、空冷911選びでは妥当なモデルかと。しかしながら、前述のナローまではいかないものの30年以上昔のクルマですから、それなりのメンテナンスやトラブルに備える気もちも欠かせません。
とくに964は、スタイルこそ911の伝統を受け継いでいるものの、メカに関しては刷新されている部分も多い上に、それらの大部分が合理化、すなわちコストカットされていたりするのです。
このコストカットは悲喜こもごもで、たとえばそれまで真鍮のパイプを使っていたところをゴムホースにしたり、削り出しの砲金が鋳物に変わっていたりなど、気にしない方もいるでしょうが、911の虜になっている方には夜も眠れないポイントになりがち(笑)。
また、現役当時にそこそこ売れたことから、市場に出まわっている中古車のコンディションに大きなばらつきがあることも無視できません。価格高騰の折ゆえ「レストア済み」などとほざいて高価格のいい訳をするクルマ屋も少なくありませんが、アテにしたら痛い目にあうこと間違いないでしょう。
とはいえ、経験上から致命的な故障は少なめ。メーター不動とかO2センサーの異常といったマイナートラブルはあるものの、そんなものポルシェユーザーにとっては日常茶飯事。とにかく、いいタマを探せる自信、環境、そしてお財布があるのなら選んでケガが少ないのが964だといえるでしょう。