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配達の荷物の積み込みにもテクと人間ドラマがある! 物流業界のスタート地点を覗いてみた

配達の荷物の積み込みにもテクと人間ドラマがある! 物流業界のスタート地点を覗いてみた

この記事をまとめると

■「荷物の積み込み」という地味な作業にも効率を上げる工夫と人の温かさがある

■ピンホール積みで荷崩れを防いで荷室のわけ方で効率を高める

■物流の現場は人の優しさで支えられている

軽バンに荷物を積み込む作業にもドラマがある

 最初にお断りしておくが、今回のネタは「軽バンに荷物を積む」──ただそれだけのことだ。特別な機械を使うわけでもなく、あっという間に積み終える秘訣があるわけでもない。それでもあえて紹介しようと思ったのは、単に荷物を積み込むだけなのに、そこに驚きや発見、そして感謝と充実感があることを、多くの人に知ってほしかったからである。

 ではさっそく、「荷物を積み込む」という小さなドラマをお伝えしよう。今回扱う荷物は、30冊が一束になったフリーペーパーで、それぞれクラフト包装されている。このパレットに積まれたクラフト包装された束を手作業で軽バンに積んでいくのだが、まずはその荷姿を見てほしい。

荷崩れを防止するピンホール積みと積み込みの工夫

 これが噂のピンホール積みだ。インターネットにはパレタイズ(商品をパレット上に積み上げる作業)の説明や荷物の積み方のイラストは数多くあるが、実際に積んだ姿は見かけない。貴重な画像といえるだろう。

 ここで、「ピンホール積み」について説明しておこう。この変則的な積み方は横方向からの力に強いため、滑りやすいクラフト包装でも荷崩れの確率を下げてくれる。さらに、荷物のまわりには「ストレッチフィルム」と呼ばれるビニールの梱包材が巻かれているので、よほどのことがない限り荷崩れする心配はない。

 このタイプの荷物の積み込みに欠かせないのがカッターだ。ぐるぐる巻きになっているストレッチフィルムは手でちぎるのが非常に難しい。そこで、フィルムに縦方向へひとつ切れ目を入れる。すると、一気に剥がすことができる。これでようやく積み込みの準備が整った。

 ここからは、ひたすら手作業で荷物を荷室に運び入れていく。いわゆる「手積み」や「ちゃぶり」と呼ばれる作業だ。とはいえ、ただ闇雲に荷物を並べればいいわけではない。今回の配送車両はごく一般的な軽バン。荷物の搬入口は後部と左右の2カ所にある。この形状を無視して、手前から順に荷物を積み上げてしまうのは、まさに自殺行為である。

 なぜなら、荷室の中央に荷物を配置するときがもっとも腰に負担がかかるからだ。つまり、この中央付近に荷物を置く作業をできるだけ減らすことが必須になる。結果として、荷物は必然的に次の写真のような配置で積み込むことになる。

 荷室は「後部・中央部・前部」の3カ所に分けて考えるのがベストだ。まだ体力が残っている作業前半では、中央部分に荷物を置いていく。その際、一番下の段だけを2列に並べておけば、その後は荷物の上を滑らせるように積み重ねられる。

 今回のケースでは、まず中央に5束を2列に並べる。そのあと後部にも荷物を配置し、中央と後部がいっぱいになったところで、左右のドアから前部に積み込む──という手順になる。

フォークマンの優しさに物流業界の温かさを感じる

 どのように積み込めば効率がいいか、おおよそご理解いただけただろう。しかし、この段階で声を大にしていいたいのはただひとつ。「フォークマン、ありがとう!」である。このフォークマンとは倉庫内でフォークリフトの作業を担当するオペレーターのことだ。

 上の写真を見ればフォークマンの優しさと気遣いをおわかりいただけるだろう。本来ならパレットをズドンと降ろしてしまえばフォークマンの仕事は終了だ。しかし、ご覧のとおりクラフト包装の山が乗っているパレットの下に、追加で2枚のパレットが置かれている。このおかげで荷物の高さを稼ぐことができ、積み込む際の腰への負担が軽減したのである。

 もちろん、こちらから頼んだわけではない。「紙は重いからさ、そんなに積んだら腰をやっちゃうよ」と、心優しきフォークマンが笑いながらパレットを追加してくれたのである。物流業界の温かさを感じた瞬間だった。

 こうして荷積みが完了し、いよいよ配達へGO! 相棒は新車の日産クリッパー。後部に350kgの荷物満載なので、アクセルを多めに開けて配達開始だ。

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