
この記事をまとめると
■フランコ・スバッロは魔改造した数多くのマシンを世に放ってきた
■ゴルフターボは客の要望でリヤに911ターボのエンジンを換装したマシンだ
■リヤをリフトアップした状態で走ることができる衝撃的なモデルだった
奇才が手掛けたバケモノハッチバック
魔改造という言葉が流行る数十年前から、フランコ・スバッロは人々が唖然として、次いでニヤリとするカスタムカーを作っていました。奇想天外なコンセプト、しかもメカニカルな合理性も際立たせる手法は、現代の目で見ても魔改造のさらに上を行くもの。フォルクスワーゲン・ゴルフに911ターボのエンジンをミッドシップし、油圧でリヤボディをもち上げて走行させるなんてスバッロ以外に思いつかない荒業に違いありません。
1980年代の若者にとってゴルフGTIは憧れの1台でした。ツインカムという言葉さえ珍しく、まして「カムに乗る」感覚など想像の域を越えるものではなかったかと。それでも、世のなかには欲ばりでお金もちという方がいるもので、ゲルハルト・ベルント氏は「ノーマルじゃ物足りない。ゴルフGTIでなんかすごいのほしい」とスバッロのもとを尋ねたのでした。
ノーマルのGTIは1.6リッターから110馬力を引き出していますが、これをスバッロは3倍まで引き上げました。3.3リッターのターボ付きボクサーエンジン、いうまでもなく当時の911ターボ用で330馬力を発揮してくれます。とはいえ、いくらボクサーユニットがコンパクトといってもFFパッケージのゴルフに積むのは難しいもの。そこで、スバッロはリヤシートを省いてミッドシップ化してしまいました。
スバッロが優れているのは、ボクサーエンジンをマウントするのに新たなサブフレームを用いて剛性とスペースを確保することで、ギヤケースやサスペンション設計の自由度を上げたことでしょう。ハイパワーなMR化でリヤサスはマルチリンク、ミッションはなんとフォードGT40用をマウントしています。さらに、100リットルの燃料タンクをフロントフード下に収めることで前後重量配分50:50としたこともスバッロの見識を物語っているでしょう。