
この記事をまとめると
■クルマ好きは依然として軽量コンパクトなFRモデルを求める声がある
■2010年にトヨタ・アイゴをベースに開発された「GRMN FRホットハッチ」が存在した
■量産化されれば若年層にFR体験を広めクルマ文化を変える可能性があった
5ドア・コンパクト・FRの夢のようなクルマが計画されていた
クルマ好きのなかで、軽量コンパクトなリヤ駆動マシンを求める声は根強い。2.4リッターエンジンを積むトヨタGR86/スバルBRZの姉妹車は身近なFRスポーツクーペとして貴重な存在だが、パワーに余裕があるため、「アクセルを全開にできるシチュエーションが少ない」という評価もある。
手に余ることなく扱えるFRスポーツカーであれば、1.5リッタークラスのFRオープン2シーターとして世界から高く評価されるマツダ・ロードスターを選べばいい……となるはずだが、ロードスターの生み出す世界観は認めつつも、「後席のある4ドア、5ドアでなければ購入対象にならない……」と諦めてしまうユーザーも少なくないのは事実だろう。
ストイックにスポーツ性だけを追求するのではなく、ファミリーやグループでワイワイと楽しめる要素をもつ、身近なFRスポーツカーを求める声は、老若男女問わず根強い。コンパクトなリヤ駆動モデルの登場がウワサされるたびにクルマ好きは沸き立ってしまうものだ。
覚えているだろうか、15年前に軽量コンパクトで、リヤドアをもつFRスポーツのコンセプトカーが発表されたことを。それが、2010年1月の東京オートサロンにて初公開された『GRMN FRホットハッチコンセプト(以下、FRホットハッチ)』である。
スポーツドライビングやチューニングを誰もが気軽に楽しめるエントリーモデルという位置づけで、「若い人たちに、楽しいFRで遊んでもらおう」という目的で開発された、このコンセプトカーのプロフィールをひとことでいえば、「クルマの楽しさを凝縮したコンパクトFR」となっている。
ご存じのように、GRMNとはトヨタGAZOO Racingの手がけたコンプリートカーに与えられるブランドだ。一見すると謎めいたスタイリングの「FRホットハッチ」だが、じつは既存のトヨタ車をベースに製作されている。
そうはいっても、オーバーフェンダーやヘッドライトといったカスタマイズ要素を除いても、どんなトヨタ車も思い浮かばないという人は少なくないだろう。ヒントは、コンセプトカーが左ハンドルになっている点にある。
答えをいえば、FRホットハッチの2BOXボディは、トヨタの欧州向けAセグメントモデル「アイゴ」がベースだ。とはいえ、アイゴは2010年代に販売されたハッチバック車である。当然ながら、ノーマル状態のアイゴはエンジンをフロントに横置きしたFFモデルだ。
そこで、FRホットハッチでは、1.5リッターエンジンをフロントに縦置き搭載、5速MTを介して後輪を駆動するといったパワートレインへ大改造を施している。エンジンは4気筒の3SZ-VE型、スペックは最高出力109馬力、最大トルク14.4kg-mと発表されていた。