
この記事をまとめると
■トラックは用途に応じ架装するために多くがシャシー構造を採用する
■歪みは走行性能に直結するため専用の修正機で精密に修正される
■中古でトラックを購入する際は見落としがちなシャシー状態の確認が不可欠だ
目に見えにくい部分が車両の価値と安全性を左右する
車両の骨格は、昭和の人なら「シャシー」を思い浮かべるのだろうが、現在では「フレーム」と呼ばれることが多い。いずれも「骨組み」「骨格」などという意味に用い、まさに車両の基本構造を成す部品である。一般に、シャシーは車両の土台を支える基本部分として作られ、そこにエンジンなどの駆動系部品やボディを載せる。1980年以降の乗用車は、ほとんどがボディを一体化した骨組み構造である「モノコックボディ」を採用している。
トラックの場合、キャビンと荷台が分離しているだけではなく、荷台部分は用途に応じて架装することが多いので、一部を除けば「シャシー構造」であるものが多い。ちなみに、車両の識別番号ともいえる「車体番号」は、このシャシーやモノコックボディに打刻されている。すなわち、トラックならシャシーこそがトラック本体を表す部品であるということだ。
前述のように、シャシーはトラックの骨格にあたるから、武骨な外観に比して極めて精密に作られている。少しでも歪みがあるなどすれば、車両がまっすぐに走れないなどといった不具合が出るのだ。とはいえ、過酷な運行条件下で長期間酷使されるため、経年劣化による歪みは避けることができない。まして、事故などに遭遇すれば大きく変形してしまうこともある。
ミラーやバンパーといった部品に不具合が出れば、新しいものなどに交換すれば済むことも多い。仮に心臓部といわれるエンジンであったとしても、乗せ替えることは可能なのだ。もちろん、シャシーも部品である以上取り替えられないことはないが、車体番号が打刻されていることからもわかるように、その場合は違う車両になってしまう。
しかし、シャシーの歪みを修正することはできる。以前は長い棒のような工具を使用し、てこの原理を応用して熟練の職人が手作業で直していたこともあったという。このような手法では修理できる範囲も限られていたが、現在では専用の大型機器が使用されている。
大阪市西成区で50年以上整備工場を営む「関西自工」のホームページによると、ここにはわが国でも数少ない高精度のフレーム修正機が完備されているという。この機械は、大型トラックがすっぽり入る鉄でできた車庫のような構造になっており、そこに修理をするトラックを入れて歪み状況を確認し、修正作業を行うのである。かなり大きな歪みにも対応できるそうなので、運送会社にしてみればトラックを買い替えずに済むぶんだけ、経費を抑えることができる。
とはいえ、シャシーはトラックの骨格にあたるわけだから、修正不可能なほど歪んでしまった場合は廃車にするしかない。中古車購入の際にも、キャビンを上げたり車体下部に潜り込んだりするなどして、シャシーの状態を確認することが大切だといわれている。ボディやバンパーのキズ・へこみは目立つので気になるものだが、安全運行のためにはシャシーの状況も正確に把握しておきたいものである。
