
この記事をまとめると
■ジャパンモビリティショー2025は来場者101万人の熱気に満ちた盛り上がりを見せた
■小型EVからFCEVまで多様な未来像がリアルに提示され海外勢も高い意欲を示した
■ショー本来の魅力と深みが復活し再び世界の主要モビリティショーとして存在感を高めた
100万人以上を熱狂させたJMSの衝撃
今年のジャパンモビリティショーは、予想以上に盛り上がった。会期中に会場へ足を運ぶ機会が何度もあったが、どの日も来場者の熱気が強く、展示内容もじつに濃かった。総来場者は延べ101万人。規模縮小が続く世界のモーターショーの流れを考えれば、この数字は驚くほどの健闘と言っていい。
まず驚いたのは、メーカーごとの個性がとてもよく出ていたことだ。トヨタは南館という新しい建屋にブースを構え、週末は入場規制、平日でもセンチュリーの前には40分待ちの行列。私はガイドツアーの仕事があったので何度も南館に入ったが、「入ったら最後、出られなくなるぞ」と冗談めかしていわれるほどの混雑ぶりだった。
ホンダの展示も強烈だった。とくにロケットは来場者の視線を一気に奪った。映像では500~600mほど上昇しているように見えたが、実際は250m前後。それでも、クルマづくりとは世界の違う宇宙への挑戦が、ホンダの技術文化の懐の深さを改めて感じさせる。自動車メーカーでありながら、本気で空と宇宙を目指しているのはホンダだけといっていい。海外のエンジニアや自動車コンサルタントを案内した際も、「ホンダってロケットまで作るのか」とずいぶん驚いていた。
一方で、スズキやダイハツの展示は「地に足のついた未来」という感じで好印象だった。スズキが出していた軽EVのコンセプトカーは、アルトやワゴンRを思わせる雰囲気ながら、見た瞬間に「これは海外でもウケる」と直感できる内容。
ホンダのNシリーズをベースにした小型EV「Super-ONE」のプロトタイプもよかった。昔の「シティブルドッグ」を思わせるワイド&ローな佇まいで、試作車にも試乗したが、仮想多段シフトやBOOSTモードの仕上がりもよく、電気自動車なのにエンジン車らしさをうまく再現していた。
今回、軽自動車~Aセグメント級のEVが一気に存在感を増していたことは、大きな潮流だと感じた。ヒョンデのインスターは軽より少し大きいAセグメントで、価格は290万円前後とされる。ホンダN-ONE e:の270万~320万円と比べても、しっかりライバルになる。BEVになったことで、軽が世界市場の土俵に上がったという印象がある。
