
この記事をまとめると
■クルマの開発にとってエンジン関係はもっともコストが掛かる部分だ
■小さな自動車メーカーはエンジンだけ他社製を載せることも珍しくない
■中身は各メーカーがそのモデルに相応しいチューニングをしていることが多い
小規模メーカーでは他社のエンジンを載せることも珍しくない
ほかのメーカーから供給されるパワーユニットを使用して自社ブランドのモデルを生産する。これは小規模な自動車メーカーにはよく見られる手法だ。パワーユニットの核ともいえるエンジンを開発する必要がなければ、自動車を作り出す労力やコストは極端に小さなものになるし、それは新型車開発のスピードを早める直接の理由にもなる。ここで問題になるのは同じエンジンを搭載するオリジナルのモデルとの差別化をどのようにして図るのかだ。ここではいくつかの例を検証してみることにしよう。
まずは我々日本人にとってはもっともポピュラーな存在ともいえる軽自動車に搭載される、660ccの直列3気筒ターボエンジンを搭載したモデルからだ。
スズキ製のこのエンジンを搭載して刺激的なライトウエイトスポーツを作り上げたのは、イギリスのケータハムだ。同社はあの軽量でスパルタンなロータス・セブンのコンセプトを継承し、21世紀においてもそれを生産し続けていることで知られている。
85馬力の最高出力を発揮する直列3気筒ターボエンジンが負担する乾燥重量はわずかに440kgであるから、5速MTとの組み合わせによる加速の鋭さは、容易に想像できるところである。ちなみに実際の0-100km/h加速は6.9秒。オープンエアドライブの爽快感、そしてコーナリングの楽しさは、日本の軽自動車とはひと味違うものに仕上がっている。
さらに望めばオプションでLSDさえ選択が可能なのだから、ケータハムがいかに上級モデルと同様の走りの楽しさを追求しているのかがよくわかる。
トヨタ製の3.5リッターV型6気筒スーパーチャージャーエンジン、そしてメルセデスAMG製の2リッター直列4気筒ターボエンジンが搭載されるロータスのエミーラも、他社のパワーユニニットを使用するという点では見逃せないスポーツカーだ。ロータスはそれを「史上最高で最後」の内燃機関モデルと発表時に宣言しているが、それだけにこのエンジンの選択には世界中のファンから熱い視線が集中した。
ちなみにトヨタ製の3.5リッタースーパーチャージャーエンジンを搭載するモデルは「V6 SE」で、ミッションは6速MTと6速ATの両方を用意。最高出力は406馬力の設定で、0-100km/h加速を4.3秒(AT仕様は4.8秒)で、また最高速度は290km/h(同272km/h)を達成する。さらによりスパルタンな「V6 SE レーシングライン」も用意される。
エミーラの場合も、その走りにはやはりロータスに独自の世界が演出されている。新設計されたアルミ押し出し材を用いた接着式シャシーがもつ圧倒的な剛性感を背景に、巧みにチューニングされたサスペンションやブレーキが、ワインディングロードではドライバーとマシンの一体感を常に高いレベルで演出。高速域で感じる優れたエアロダイナミクスもさすがはロータスの作と思わせる部分だ。
