
この記事をまとめると
■マセラティMC20のマイナーチェンジ版であるMCプーラ・チェロに試乗
■630馬力V6ツインターボが生む官能的なドライビングフィールは健在
■MCプーラ・チェロは電動化時代にあえて純内燃機関を追求したミッドシップスポーツだ
「MC」の名は伊達じゃない
マセラティの最新ミッドシップスポーツである「MCプーラ」のステアリングを握ることができた。ちなみにこのMCプーラは、2020年にデビューした「MC20」のビッグマイナーチェンジ版。MCとはマセラティ・レーシングの意である「マセラティ・コルセ」を、「プーラ」とはイタリア語で「純粋な」という意味をもつ。そして、今回試乗したMCプーラは、リトラクタブル式ハードトップを備える「MCプーラ・チェロ」。チェロとは「空」を表している。
MCの称号が与えられたマセラティには、個人的にはとても大きな思い入れがある。それはMCという称号に、2004と2005年の両年で、トータルで55台が生産された(そのなかで実際にカスタマーにデリバリーされたのは50台のみだったという)「MC12」の残像を思い描くからだ。
MC12はあの「エンツォ・フェラーリ」のマセラティ版として語られることも多いが、エンツォ・フェラーリと、マセラティMC12は、そもそもその開発思想が異なっていた。前者はあくまでもロードカーとして、そして後者はレーシングカーとして生を受けている。MC12はエンツォよりもはるかにスパルタンだった。のちに短時間ではあるが、クローズドコースでそれをドライブする機会を得たときに受けた衝撃は、いまもなお鮮烈な記憶として残っている。
そして2020年を、新たな歴史の始まりの年と定義したマセラティは、このMCの称号を復活させることを決断する。ミッドに搭載された副燃焼室技術を採用した3リッターのV型6気筒ツインターボエンジンを始め、すべてが「メイド・イン・モデナ」、つまりマセラティ製であることを世界に強く主張したMC20は、ここからさまざまなモデルを派生。
2022年にはレーシングカーの「MC20 GT2」が、また翌2023年にはそのロードバージョンとなる「GT2ストラダーレ」や、サーキット走行専用車の「MCXtrema」も誕生している。2025年にデビューを予定していたBEVの「MC20 ファルゴーレ」の発売こそキャンセルされてしまったようだが、マセラティはMC20をさらに進化させることに、常に積極的な姿勢を貫き続けてきたのだ。
だからこそ、そのMC20がMCプーラへとマイナーチェンジされたときの期待感は、当然のことながら大きかった。基本的なシルエットこそMC20のそれを継承しているものの、さらにエアロダイナミクスを向上させるためにフロントのエアインテークやリヤのディフューザー、そしてドアのボトム部に備わるサイドのスポイラーなどのデザインが見直されたMCプーラのスタイルはじつに魅力的で、ほかのブランドの作とは一線を画する、独特で妖艶な美しさに包まれている。
