この記事をまとめると
■2003年にロールス・ロイスは12年ぶりにファントムを復活させた
■ロールス・ロイス・ファントムは全長5.8m超の巨体にV12エンジンを搭載
■ファントムはショーファーカーでありながら走れるロールス・ロイスとなっていた
泣く子も黙るロールス・ロイスのフラッグシップ
このクルマをはたしてスーパーカーと呼ぶべきなのか。21世紀に誕生したスーパーカーを、時系列を追って紹介していくというこの連載を始めるにあたって、正直なところ筆者はかなり悩んだ記憶がある。そのモデルの名は「ロールス・ロイス・ファントム」。
ちなみにイギリスの超高級車メーカーであるロールス・ロイスにとって、ファントムという車名は、同社の歴史を語るうえでは欠かすことのできないもの。1925年に生産を開始した初代モデルに始まり、現在にまで続く一連のファントムには、超高級車の頂点を極めたモデルとして常に熱い視線が注がれてきた。
ロールス・ロイス・ファントムのフロントスタイリング画像はこちら
一方でロールス・ロイスという会社の成り立ちは、さまざまな紆余曲折を経て現在に至っている。1906年に設立された「ロールス・ロイス・リミテッド」社は、1960年代には技術革新の遅れなどを理由として急速にその業績を悪化させ、1971年にはイギリス政府によって国有化。1973年には新たに自動車部門のみを分離することで(それまでのロールス・ロイスは航空機用エンジンなどの開発や生産も行っていた)、新たに「ロールス・ロイス・モーターズ」社として再び民営化されるが、1998年にはドイツのVWグループに収まるに至る。そして、時代が21世紀を迎え2003年になると、BMWによって現在の「ロールス・ロイス・モーター・カーズ」社が設立され、ここに新たなスタートが切られることになったのである。
この2003年に発表された、新生ロールス・ロイスからのファーストモデルこそが、1991年を最後に一時はその歴史が途絶えていた伝統のネーミングを復活させた、新型「ファントム」だった。それを見た者をまず驚かせたのは、もちろん流麗にして優秀なエアロダイナミクスを想像させるボディデザイン。
ロールス・ロイス・ファントムのフロントスタイリング画像はこちら
のちにこの新型ファントムのシリーズには、ホイールベースを延長することでさらに後席の居住性を向上させた「EWB(エクステンデッド・ホイール・ベース)」、2ドアの「クーペ」、あるいはそれをベースとしたオープンモデルの「ドロップヘッドクーペ」などが派生していくが、最初に登場したいわゆるスタンダードな新型ファントムも、そのボディサイズは全長×全幅×全高で5834×1990×1632mm、ホイールベースは3570mmと、そのボリューム感は相当に大きなものだった。
コーチドアを呼ばれる観音開きのドアや、パルテノン神殿をモチーフとした堂々としたグリルが継承されていたのは、カスタマーにとっては大きな喜びであったに違いない。まさに贅を尽くしたともいえるキャビンのフィニッシュなどは、改めてそれを解説するまでもないほどである。
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だがこの新型ファントムでそのカスタマーが感じたもっとも大きな進化は、その走りにこそあった。これまでファントムといえば究極のショーファー・ドリブン・カーと誰もがイメージしていたはずだが、BMWはそれにドライバーズ・カーとしてのキャラクターをプラスしてきたのだ。
フロントに搭載される6749ccのV型12気筒DOHC48バルブエンジンは、もちろんBMWによって開発されたもので、その最高出力は460馬力、最大トルクは721Nmと発表されていた。これに6速ATを組み合わせることで3030kgにも達する車重を意識させない、きわめてスムースで俊敏な加速性能を実現することに成功している。
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参考までに当時ロールス・ロイスから発表された最高速は240km/hという数字。シャシーのセッティングもロールス・ロイスらしい乗り味はそのままに、ドライバーが望めばコーナリングの楽しさも十分に味わえるスポーティさを兼ね備えた。
そうBMW傘下で誕生した新型ファントムは、そのスタイルこそフォーマルな4ドアサルーンではあるものの、スーパーカーに匹敵する運動性能を秘めたモデルにほかならなかったのだ。