
この記事をまとめると
■1989年のレガシィ登場を機に日本ではステーションワゴンブームが起きた
■中国では近年ステーションワゴン系モデルが増え新たな需要を生みつつある
■SUV全盛の世界市場でも中国メーカーは富裕層や多様なニーズを狙う
レガシィが築いたワゴン文化は中国へ
かつて日本がバブル経済に沸いていたその末期ともいえる1989年、初代スバル・レガシィツーリングワゴンがデビューすると、たちまち日本中で大人気となった。その後、スバル以外の各メーカーからもさまざまなサイズのワゴンモデルが新規投入され、日本国内にステーションワゴンブームが巻き起こった。
そもそもステーションワゴンというものは、1960年代あたりからクラウンやセドリック、グロリアなど一部モデルでは設定があったものの、貨客兼用、つまり商売をやっているひとが仕事での荷物輸送と自家用使用を兼ねて乗っているケースが多かった。
しかし、レガシィツーリングワゴンには4ナンバー商用バン仕様はなかった。他メーカーでは一部商用バン仕様のあるモデルも存在していたが、レジャービークルとして広いラゲッジスペースにキャンプ用品を積んで週末にキャンプ場へ向かうなど、アウトドアブームを巻き起こす一因ともなった。
社会そして自動車市場が成熟へ向かうなかの通過点なのか、中国ではステーションワゴンのラインアップが目立って増えてきている。単純なステーションワゴンというよりは、シューティングブレークのような実用性より見た目を意識したモデルばかりとなっている。
筆者の見てきた限りは、2017年に上海汽車系の栄威(ロエベ)ブランドがカローラサイズぐらいの”Ei5”というBEVステーションワゴンを2025年までラインアップしていた。このEi5はオーソドックスなステーションワゴンスタイルを採用していた。ただ、ほかの中国系メーカーからこれに続くモデルはなく、2025年に上海へ行くと、このEi5がタクシーとして大活躍していた。タイでも“MG EP+”として、バンコク辺りでタクシーやライドシェア車両として活躍している。
2026年4月24日から5月3日まで開催された第19回北京国際自動車展覧会(北京モーターショー)会場内でもお洒落なステーションワゴンを数多く見かけたが、この流れを誘引したのはBYDではないかと考えている。2025年春に上海で開催された上海国際汽車展(上海モーターショー)にて、BYDは”海豹(シール)06 DM-i 旅行版(ステーションワゴン)”を発表している(2026年後半に日本市場導入予定)。
北京モーターショーで見かけたステーションワゴンはシール06よりはサイズが大きいので、直接影響を与えたというよりは、「これいいね」とヒントを与えたようにも見ている。
ただし、世界的なSUV人気の高まりにより、かつては「ママのクルマ=ステーションワゴン」だったアメリカや、ブームが過ぎ去って久しい日本ではラインアップは限定的となっており、東南アジアでもボディタイプのカテゴリーすら用意されていない国もあるというありさま。いまだに高級ブランドでは熱心にドイツ系がラインアップを続けているのを見ると、欧州そしてアメリカや日本の富裕層あたりまで囲い込もうとしているのかもしれない。
ステーションワゴンにはペットという印象がつきものだが、中国の都市部でも富裕層が愛犬を散歩させているシーンを頻繫に見かけるようになったので、中国では都市在住の感度の高い富裕層を狙っているのかもしれない。多様化する消費者ニーズへ敏感に対応する中国メーカーの腰の軽さを垣間見たような思いになった。
