
この記事をまとめると
■1977年誕生のラーダ・ニーヴァが大規模改良を実施
■新エンジンや防錆対策で性能と実用性を向上
■電動化時代でも独自の価値を追求し続ける
電動化時代なぞどこ吹く風
ラーダ・ニーヴァという名前に馴染みのない読者も少なくないだろう。旧ソ連の国営自動車メーカー「アフトワズ」が1977年に生産を開始したこのSUVは、当時としては画期的な設計をもっていた。フルタイム4WD、独立フロントサスペンション、モノコックボディ。これら3つを同時にもつ量産コンパクトSUVは世界初とされていた。
「ニーヴァ」とはロシア語で「耕作地」を意味し、その名のとおりロシアの農村地帯や山岳地域で道なき道を走るための実用車として広く普及した。ソビエト軍や警察、山岳救助隊にも採用され、パリ・ダカールラリーにも出場した歴史をもつ。輸出先は100カ国以上に及び、とくにフランスをはじめとする欧州市場でも堅調な人気を誇った。
時代が流れても基本設計は変わらなかった。2020年に名称が「ラーダ・ニーヴァ・レジェンド」と改められた3ドアモデルと、5ドアの「ニーヴァ・トラベル」という2本立てのラインアップで現在も生産が続いている。生産累計は100万台を超え、世界でもっとも長く現役を続けているSUVのひとつだ。
その長寿のモデルが、2026年6月に開催されたサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)の舞台で大幅な改良を受けた新型を披露した。アフトワズの公式発表によれば、今回の改良で採用された新設計・改良済み部品の数は1000点超にのぼるという。
もっとも大きな変更点はエンジンで、新型1.8リッター8バルブエンジンが搭載される。最高出力90馬力、最大トルク153Nmへと向上し、燃費も走行モードに応じて3〜30%改善されたとされる。半世紀近く連れ添ってきたエンジンとの決別は、ニーヴァにとってひとつの時代の区切りといえるだろう。
今回の改良で注目すべきは、「初」がいくつも並んでいることだ。まずボディ腐食対策として、多くの外板部に初めて両面溶融亜鉛メッキ鋼板が採用。旧来のニーヴァはサビへの弱さが指摘され続けてきており、50年越しの課題がようやく解消されつつある。
ハンドリング面ではフロントのスタビライザーを前方へ移動し、操縦安定性と乗り心地を改善。ベンチレーテッドブレーキディスクを新採用し、高負荷時のブレーキフェード抑制を図っている。
室内の使い勝手も見直された。クラシックニーヴァとして初めて運転席フロントエアバッグが追加されたほか、シフトレバーがドライバーに近い位置へ移動し、副変速機は2本レバーから1本レバーに統合。同時に3点目の支持部を追加することで振動を低減した。ドア・イグニッション共通のシングルキーと集中ドアロックが採用され、使い勝手が格段に向上している。快適装備としては現代的なエアコンやディスプレイオーディオも新たに加わった。
新たにツートーンカラーの16インチホイールが採用されるなど、ビジュアルにも若干手が加わっている。
価格とグレード構成は生産準備が完了してから改めて発表されるとしており、現時点では具体的な数字は出ていない。ただし、これだけの改良を施した意味は明快だ。「ニーヴァはまだ終わらない」という宣言でもある。
電動化が加速する現代の自動車市場において、ニーヴァがもつ「シンプルで堅牢で安く、どこでも走れる」という哲学は、ある種の対極にある。その哲学を磨き続けることが、50年目のアフトワズが選んだ道なのだ。
