
この記事をまとめると
■トラックの荷台に木材が使われるのは荷物が滑りにくく荷崩れを防ぎやすいため
■補修しやすく衝撃吸収性にも優れるため荷物や車体への負担を軽減できる
■用途によって床材は異なるものの木張りは現在も物流現場で広く採用されている
総合的な実用性で選ばれている
トラックの荷台をよく見ると、床が金属ではなく木で張られている車両が少なくない。平ボディはもちろん、箱車の荷室でも、床面に木材が使われていることがある。外から見ると鉄やアルミのボディなのに、なぜ荷物を載せる床だけ木なのか。頑丈さだけを考えれば鉄板のほうが強そうに思えるが、実際の物流現場では、木張りの床にはかなり合理的な理由がある。
荷台の床に木材を使用する最大の理由は荷物が滑りにくいからだ。鉄板の床は丈夫だが、表面が硬く、荷物との摩擦が少ない。段ボールやパレット、木箱、機械部品などを積んだとき、発進やブレーキ、カーブで荷物が動きやすくなる場合がある。もちろん荷物はロープやラッシングベルトで固定するが、床そのものが滑りにくいことは荷崩れ防止につながる。木の床は表面に適度な摩擦があり、荷物を受け止める感触も柔らかい。走行中、荷台のなかでは前後左右の力がかかり続けるため、床材の違いは意外と大きい。
荷台に使われる木材としては、アピトンと呼ばれる南洋材がよく知られている。アピトンは硬く、重く、摩耗に強い木材で、トラックの荷台や床板、コンテナの床などに使われてきた。フォークリフトの爪が入ったり、パレットを引きずったりする荷台では、柔らかすぎる木ではすぐ傷んでしまう。そこで、ある程度の硬さと粘りがあり、荷物や作業に耐えられる木材が求められる。車両や用途によっては、合板や別の硬質木材が使われることもあり、単に木ならなんでもよいというわけではない。
次に、補修のしやすさがある。荷台の床は、かなり過酷な環境で使われる。フォークリフトの爪が当たることもあれば、重い荷物を落としたり、角のある荷物で傷をつけたりすることもある。鉄板なら強いように見えるが、へこみやサビ、滑りやすさの問題が出ることがある。一方、木張りであれば、傷んだ部分を張り替えたり、削ったり、部分的に補修したりしやすい。現場で使い続ける車両にとって、直しやすいというのは重要な性能なのだ。
木には、衝撃を吸収しやすいという利点もある。荷物を積み下ろしするとき、床には常に衝撃が加わる。硬い鉄板の上に直接荷物を置くより、木の床のほうが当たりが柔らかく、荷物にも車体にもやさしい。とくに箱物や機械部品、家具など、傷を嫌う製品では、床の硬さが荷扱いに影響する。作業する人にとっても、木張りの床は足もとの感触がよく、鉄板だけの床より扱いやすい場面がある。
もちろん、すべてのトラックが木張りというわけではない。冷凍車や食品系の車両では清掃性や衛生面から別の床材が使われることもあるし、用途によってはアルミや縞鋼板、樹脂系の床が選ばれる場合もある。だが、一般的な貨物輸送では、滑りにくさ、補修性、衝撃吸収性、作業性のバランスがよい木張りの床がいまも多く使われている。
トラックの荷台の床は、ただ荷物を置く板ではない。荷物を守り、作業を支え、車両を長く使うための重要な部品である。鉄の車体に木の床という組み合わせは、一見すると古く見えるかもしれない。しかしそこには、物流の現場で積み下ろしを繰り返してきた経験から生まれた実用性がある。木張りの荷台は、見た目以上に理にかなった、働くトラックらしい装備なのである。
