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アウトバーンに潜む“初見殺し”の罠! そこを抜けるとF1にバイクにコンコルドまでが居並ぶ最強博物館が待っていた

アウトバーンに潜む“初見殺し”の罠! そこを抜けるとF1にバイクにコンコルドまでが居並ぶ最強博物館が待っていた

ドイツに多々ある技術博物館はよそ者には厳しかった!

 ジンスハイム交通技術博物館は、ベルリンにある「ドイツ技術博物館」、ミュンヘンにある「ドイツ博物館」と並んで”最強工業国”を謳うドイツを代表する技術博物館です。また、ドイツ博物館の分館である「交通博物館」も技術博物館となっています。これらの技術博物館”群”のなかでも、自動車関係の収蔵展示がとくに多いのが、今回紹介するジンスハイム交通技術博物館です。

 こちらにはこれまで2010年の9月と2023年の7月、都合2度訪れています。そして2回ともシュパイヤー技術博物館と合わせて1日で巡りました。技術志向のクルマ好きには至高のスケジュールです。

 ドイツ取材ではフランクフルトを起点とすることが多いので、高速道路1本でアクセスできるのは弾丸ツアーにとってはとても有効ですが、その路線にはひと癖ありました。フランクフルトを出て高速道路(アウトバーン)のA5号線を南下するのですが、このA5号線は途中のジャンクションで側道に分かれていき、本線を直進するとA67号線に入ります。さらにA67号線を進むと、今度はA67号線が側道に分かれていき、本線を直進するとA6号線に入っていくのです。2023年に訪れた際はナビも完備し、また2度目とあって慌てることもなかったのですが、最初に訪れたときには、A5号線をマンハイム方向に向かって道なりで走っていたのに、気が付けばA67号線を走っていて、さらに気が付くとA6号線を走っている有様で、大いに慌てた記憶があります。

 アルファベットでつづられた標識はエトランゼ(よそ者)には識別し難く「A5だけに英語(実際には独語)は難しい」ということでしょうか? とオチを付けたところで、収蔵展示車両についても紹介しておきましょう。

リニューアルを受けてレーシングカー中心の展示に

 さすがに2013年の年月は長く、2010年に初めて訪れたときにはコンパクトカーの展示が目立っていましたが、2023年に再度訪れたときには大きくリニューアルされていて、F1マシンをメインとしたレーシングカーの展示に注力されていました。シャーシナンバーまでは確認できていませんが、2018年に閉鎖されたドニントン・グランプリ・コレクションに収蔵されていた車両(の一部)が移転してきたのかもしれません。

1972 BRM P180

 イギリスのF1コンストラクターBRMが1972年のF1GP用に開発したマシンで、トニー・サウスゲートがデザインして、自社製の3リッターV12を搭載。低く薄いスポーツカーノーズが特徴的だが、実戦ではウイングノーズを使用していた。

  

1980 Copersucar-Fittipaldi F7

 グランドエフェクトカーの開発熟成に苦労したフィッティパルディは80年シーズンに向けウォルター・ウルフ・レーシングを買収し、ハーベイ・ポスルスウェイトも開発に参加。ウルフWR9を発展させたフィッティパルディF7を投入した。

  

1989 Zakspeed 891

 エンジン・コンストラクター/チューナーとして名を馳せていたザクスピードが、チームを結成して85年から自製のターボエンジンを搭載したマシンでF1GPに参戦。ターボが禁止された89年にはヤマハのOX88に換装した。

 またこのタイミングではル・マン24時間レースをフィーチャーした企画展も行われていて、レーシングカーの存在がより強調されていたのも事実です。トップフォーミュラで言うなら、1970年代から80年代にかけてのF1マシンだけでなく近代F1黎明期のマセラティや、大戦前のマイバッハ、さらにはゴードン・ベネット杯に出走したスターなど、見逃せないマシン群も多数展示されていました。

1956 Maserati 250F

 F1GPが排気量2.5リッター以下のマシンで戦われていた1954年から60年にかけて、マセラティが投入したGPマシン。2.5リッターの直6エンジンを搭載し、56年にはスターリング・モスがモナコGPとイタリアGPで優勝を飾った。

  

1920 Maybach Spezialrennwagen

 現在ではベンツの最高級ブランド名となっているマイバッハは、かつてはエンジンメーカーとして飛行船のエンジンなどを製作していた。この車両は飛行船用の23ℓ6気筒エンジンを搭載したスペシャルモデル。

  

1928 Maybach W5 SG

 高級車メーカーとしてマイバッハの名を知らしめたのがW5。より上級な後継モデルとして1928年に登場したのがW5 SGだ。ネーミングSchnell Ganggetriebe(高速のマニュアルトランスミッション)を意味している。

  

1905 Star Rennwagen/Gordon Bennett

 世界で最初の“国別対抗レース”として知られるゴードン・ベネット杯の最終大会となった1905年の第6回フランス大会に向けて、イギリスのスター・エンジニアリングが製作したレースカー。エンジンは10.16ℓ直4だ。

 またバイクでは、Einrad-Motorradと名付けられた、1輪のオートバイのような”変わり種”も目を惹きました。しかし個人的にはボルクヴァルト1500RSが一推しです。小排気量でハイパフォーマンスを発揮するために軽量化と空力を追求するというのは、ポルシェの祖であるタイプ64にも通じるコンセプトです。

1885 Daimler Reitwagen

 ゴットリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハの手による世界初の内燃機関を動力とするオートバイ。カール・ベンツによるパテント・モトールバーゲンとともに、ドイツがクルマの父であることの証左だ。

  

1894 Einrad- Motorrad

 パリ在住のエリヒ・エディソン=プートンによって製作された1輪のオートバイ。収蔵車両はレプリカだが、オリジナルの車体とパリ製のオリジナルエンジンを使用して完璧に復元されており、現在でも走行可能だ。

  

1953 Borgward Hansa 1500 RS

 ボルクヴァルト1500RSは、ごく普通の2ドアセダンをベースに仕立て直したレーシングカー。エンジンや足まわりだけでなく、ボディとルーフを延ばして空気抵抗の低減を追求した”空力マシン”。

 近年では多くのスポーツモデルがより豪華で大きく重くなってしまい、その対応策としてエンジン出力を引き上げるために排気量も増大して……という循環を繰り返していますが、このボルクヴァルトそんな現代の潮流へのアンチテーゼとして存在感を主張しているように思えたのです。

1934 Mercedes-Benz 130 Converted Woodgas Operation

 メルセデス・ベンツによるリヤエンジンのコンパクトカー。130をベースに木炭ガス発生装置を組み込んだ、いわゆる“木炭車”。1.3リッターと当時の最小エンジンを組み合わせてガソリンの節約を追求する。時代を象徴する1台だ。

  

1963 René Bonnet Djet III/IV

 市販スポーツカーで初めてミッド・エンジン・レイアウトを採用したルネ・ボネのジェットをベースに、エンジンを1リッターの直4DOHCに換装。空力を追求した結果、1963年のル・マン24時間では熱効率指数賞を獲得している。

  

1985 Gebhardt JC 843

 ドイツのレースカー・コンストラクター/レーシングチームであるゲプハルトが1984年シーズンに向けて製作したグループC2 マシンがJC843。ル・マン24時間では85年にクラス2位、86年にはクラス優勝を果たしている。

  

2017 Toyota TS050 Hybrid

 トムスとともにル・マン24時間に挑戦を始めたトヨタは、年を追うごとに体制を強化。2016年にはハイブリッドのマシンとしては2代目となるTS050を投入。17年にはトップ走行中ラストラップでストップしたが、翌18年には悲願を達成した。

  

2015 Porsche 919 Hybrid

 956/962CでGr.Cを席巻していたポルシェが、新時代のWECに向けリリースしたハイブリッドのプロトタイプ。デビュー翌年の2015年には早くもル・マン24時間を制覇した。

ジンスハイム交通技術博物館 Auto und Technikmuseum Sinsheim

Eberhard-Layher-Straße, 74889 Sinsheim, Deutschland.
www.technik-museum.de

毎日開館。開館時間は09:00~18:00(土日休日は09:00~19:00)
入館料は€25.00(邦貨換算、約4410円)

  

 ジンスハイム交通技術博物館はフランクフルトからアウトバーンを使って110km余り/1時間強。アウトバーンは、A5号線からA67号線、A6号線とジャンクションを乗り継ぐことになるが、各ジャンクションで道なりに進めば勝手に号線が変わっていくので、迷うことはないだろう。そしてA6を33番b/ジンスハイム-南(Sinsheim-Süd)で降りることになる。左手にコンコルドなど数機の航空機が見えたら行き過ぎだが、次の出口、34番/ジンスハイム-シュタインスフルム(Sinsheim-Steinsfurt)から折り返しても数kmだから心配無用だ。

※本記事は雑誌「CARトップ2026年2月号」の記事を再構成して掲載しています

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