
この記事をまとめると
■シャオミが新ブランドを立ち上げラグジュアリーSUV市場へ進出
■EREV採用でEV走行と長距離移動の両立を狙う
■家電連携や多彩なシート構成で走るリビングを実現
既存モデルとはまったく別の方向性
2024年に初のEVとして「SU7」を発売。そのハイパフォーマンス版の「Ultra」ではニュルブルクリンクのタイムでポルシェ・タイカンの記録を打ち破り、2025年にはSUVの「YU7」を発表するなど、わずか1年あまりで世界の自動車業界を震撼させたシャオミだが、じつはその勢いには翳りが見えていた。2026年上半期のEV販売は年間目標のわずか3分の1にとどまっており、SU7、YU7以降ニューモデルの展開もなかったのである。
しかし、ITの巨人がこのまま黙って引き下がるはずはなかった。2026年7月、新たな自動車サブブランド「Sky Nomad(スカイノマド)」を正式発表したのだ。SU7・YU7というピュアEVで培ったブランド力をベースに、新たなカテゴリーに打って出る。その第1弾として発表されたのが「N90 Max」と「N70 Max」の2台だ。
欧州車テイストのスポーティな仕立てだったSU7・YU7から一転、スカイノマドはそのスタイリングからわかるようにラグジュアリー路線に転じた。技術面でのコアとなるのは、EREV(Extended Range Electric Vehicle)と呼ばれるレンジエクステンダー方式のパワートレインだろう。76kWhという大容量バッテリーを搭載し、街乗りや通勤はバッテリーだけで走る純EV的な使い方ができる。高速道路での長距離や郊外のキャンプなど電欠リスクが生じる場面では、1.5リッターターボエンジンが動き出すが、このエンジンはタイヤとは直結せず発電のみを担う。
EV走行距離は約400〜505kmを見込み、エンジン発電を加えた総航続距離は最大1706kmとアナウンスされている。これらの数字はいずれも中国独自のCLTCモード値なので、WLTCモードに換算すると2割ほど目減りすると目されるが、それでもなお「週末のロングドライブや車中泊でも航続距離の不安を完全にゼロにしたい」という中国のファミリーユーザーの要求に応えてあまりある性能だといえるだろう。
フラッグシップたるN90 Maxの最大の見どころは、まさに「走るリビング」といえる車内空間の設計だ。前後の座席が反転・リクライニングすることで、空間構成に多彩なバリエーションをもたせている。
ここで思い出されるのが、シャオミはもともとスマートフォン・テレビ・家電などのエコシステムを強みにもつITメーカーだということだ。多彩なシートアレンジこそ平成期の国産ミニバンでも見られたが、車内にもち込んだシャオミのデバイスが連携し、音楽・映像・空調・照明をシームレスに制御するというコンセプトは、従来の自動車メーカーの発想からは生まれにくいアプローチだろう。
N90 Maxは全長5285mmの7人乗りとフルサイズSUVに位置するサイズ感となっている。N70 Maxは全長4960mm・5人乗りとひとまわり小さい設定で、より広いユーザー層を狙う。さらに「Mandao(マンダオ)」と呼ばれるポップアップルーフ搭載のキャンピングカー派生モデルも用意されており、車体の上にテントが内蔵されて展開する仕様とされる。週末をそのまま車内で過ごすという車中泊文化が急速に広がる中国市場に向けた、シャオミらしい商品展開だ。このスカイノマドシリーズの導入が、シャオミの自動車事業に新風を吹き込むことができるか注目したい。
