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一度は消えかけた直列6気筒エンジンがなぜ今復活しつつあるのか?

一度は消えかけた直列6気筒エンジンがなぜ今復活しつつあるのか?

小排気量ターボの進化でV6・V8が直4・直6に置きかわる

 昔は6気筒といえば、V型6気筒ではなく直列6気筒でした。しかし少しずつV型6気筒へと移行していき、例外的にBMWだけが直列6気筒を作り続けてきました。しかしながら最近、メルセデス・ベンツが直列6気筒を復活させています。その経緯を振り返ってみることにしましょう。

 昔はエンジンの燃焼も安定せず、基本的に不安定な振動を生んでいました。とくに問題となるのは自然発生的なエンストで、再始動に手間がかかり、また再始動が困難なこともままありました。

 その発生を抑えるため、エンジンの気筒数は多いほうが都合がよく、また振動を抑えることが可能になります。高級車に気筒数が多いエンジンが搭載されるのは、そうした理由があるからです。そして、その中心的な存在がヨーロッパでは直列6気筒であり、アメリカではV型8気筒でした。

 かつて直列6気筒が持っていたメリットは、完全なバランスでした。それが滑らかな回転フィーリングとなり、ドライバーと乗員に高級感を感じさせるものでした。V型6気筒も存在しましたが、その多くがV型8気筒から2気筒を切り落とした形でバランスが完全ではなく、燃焼間隔が不均等なものもありました。つまりV型6気筒は、V型8気筒のコストダウン版だったという側面もあったのです。

 そうしたV型6気筒が直列6気筒に代わって主役になっていったのは、エンジンの高性能化、FF車への搭載、クラッシャブルゾーンの確保、といった要件があったからです。エンジンを高性能化するには各気筒の燃焼を均質化しなければなりませんが、一般的な直列エンジンでは一番手前の気筒と一番奥の気筒では冷却水の温度でさえも異なり、当然燃焼状態も変わってしまいます。横置きFFへ直列6気筒を搭載するのは、かなり困難です。そして前方衝突の安全性を確保するためには、ボンネットに潰れシロが必要で、長い直列6気筒エンジンは困った存在だったのです。

 しかし、そうしたトレンドが最近になって逆転しそうな気配になりました。BMWだけでなく、メルセデス・ベンツが直列6気筒を搭載し、V型6気筒を廃止する方針だからです。

 その理由はエンジンのダウンサイジングによるものです。つまり単純にV型6気筒を直列6気筒に置き換える、ということではないのです。これまでのV型6気筒の代わりは、直列4気筒ターボになります。つまり新しい直列6気筒はターボ付きで、V型8気筒の代わりになるわけです。もっといえば新世代の直列6気筒は、V型8気筒並みの性能が求められることになります。

 4リッター以上の排気量を持つV型8気筒エンジンは、豊かな低速トルクと伸びやかなパワーフィールが優れたポイントです。これを排気量の小さな6気筒ターボエンジンで実現するには、そう簡単ではありません。そこで有効なのがシーケンシャルターボです。排気ガスの圧力が低い時は小さなターボで、高回転でパワーが必要な時には大きなターボへと切り換えるシステムです。これで低速トルクと、高回転のパワーを両立することが可能になります。

 日本車でいえば、マツダのスカイアクティブD 2.2リッターが採用しています。スカイアクティブD 1.5リッター版の低速トルクの不足感は、単に排気量が小さいだけでなく、2.2リッターとはターボの構成も異なるからなのです。そして、このシーケンシャルターボはV型エンジンに採用するには無理があり、直列エンジンにマッチします。

 V型6気筒の持っていたメリットのひとつ、FF車への搭載という面では、すでにダウンサイジング直列4気筒ターボがその役割を担っていますね。2リッターで300馬力程度は可能ですから、4リッター級の性能ということになります。

 それ以上となればFFというわけにもいかず、であればV型6気筒である必要性もありません。FR用の6気筒エンジンは、直列になっていくのが正当なトレンドなのです。

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