なぜF1マシンはタイヤがむき出しなのか?

かつては最速を追求した結果がオープンホイールだった

 F1をはじめとするフォーミュラカーの一般的な定理は「オープンホイールのシングルシーターのレース専用車両」といったところ。アメリカではインディーカーなどをフォーミュラカーではなく、オープンホイールカーと呼ぶのが一般的だ。

 つまり、それほどフォーミュラカー=オープンホイールというイメージは、ヨーロッパでもアメリカでも日本でも定着している。ではなぜレースの最高峰として最速を争うマシンが、オープンホイール=タイヤむき出しの車体でなければならないのか?

 F1世界選手権が始まったのは1950年。当時は4500cc以下のNAエンジン、もしくは過給器付きの1500ccの単座のレーシングカーという車両規定(規定=フォーミュラ)しかなかった。そのため、1954年と1955年のF1チャンピオンになったメルセデス・ベンツW196は、タイヤを覆うストリームラインという流線型ボディを採用していた。

 しかし、視界の悪さや整備性の悪さという弱点もあり、メルセデスもオープンホイールにスイッチし、以後オープンホイールが定着している。ただ、ほかのチームがタイヤを覆うことをしなかったのは、当時の技術としてオープンホイールこそ最速を追求した形だったから。

 黎明期のF1マシンはFRレイアウト。エンジンは大きく強力だったが、タイヤは細く貧弱だった。こうしたマシンを運動性能の優れた速いマシンにするには、車体をコンパクトにしてとにかく軽量・低重心にするのが手っ取り早い。

 そうなるとライトも屋根もいらない、タイヤもむき出しにすればフェンダーもいらないと、こういう考えになるわけで、かくしてフォーミュラカーはオープンホイールがスタンダードになる。余談だが1960年代、無冠の帝王とよばれた伝説のF1ドライバー、スターリン・モスは、ロータス18の非力さを補うために、サイドパネルまで外して軽量化して出走したこともある!

 かくして、フォーミュラカー=シングルシーターのオープンホイールという図式ができ上がり、今ではレギュレーションでそのことが定められている。ただし、最速のレーシングカーを作るうえで、空力の要素が増えれば増えるほど、むき出しのタイヤはエアロダイナミクスの面ではマイナスでしかない。また、タイヤ同士の接触が大事故の原因になることも多いため、安全面でも危惧されている。

 安全面といえば、フォーミュラカーのもうひとつの代名詞、オープンコックピットも、ドライバーを危険に晒していることが指摘されており、今シーズン=2018年のF1マシンには、“ハロ”というコックピット保護デバイスが装着され、ニュースになった。

 オープンホイールに関しても、EVのフォーミュラカーレース、“フォーミュラE”では、タイヤのトレッド面をできるだけ覆うような車体デザインを義務付けているので、近い将来、フォーミュラカーの特徴である、オープンホイール・オープンコックピットも、変化変形してくる可能性は大いにある。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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