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プラスアルファの価値を実現! 新型トヨタ・カローラ セダン&ツーリング デザイナーインタビュー (2/2ページ)

プラスアルファの価値を実現! 新型トヨタ・カローラ セダン&ツーリング デザイナーインタビュー

コンマ5mmという微小な範囲内で徹底的なこだわりの追求を!

 いよいよ国内での正式デビューを飾った新型カローラ、セダンとツーリング。先代カローラまでは、日本国内向けとグローバルモデルとではプラットフォームからして異なるという、いわば「別物」のクルマだったが、新型は同じひとつのクルマとして開発を実施。エクステリアデザインもグローバルモデルと同じデザインが採用されている。

「同じコンセプトのデザインですが、じつは国内モデルは日本の使用環境に合わせて、サイズが小さくなっています。そのため、デザインの一部も日本専用に設計されているんです」

 そう語るのは、グローバル・国内モデルの両方で外形デザインのリーダーを担当した藤原裕司さん。

「新型カローラでは、プリウスやC-HRでも使われているTNGAのCプラットフォームが採用されているんですが、それがデザインに非常にいい影響をもたらしています。低重心でスポーティなシルエットが作れるプラットフォームですから、表面的な意匠だけで表現するのではなく、骨格、プロポーションそのものから、しっかりとスポーティなデザインを実現することが可能だったんです。じつはここ何代かのカローラでも、『スポーティさ』はデザインの重要な要素だったのですが、今回の基本骨格のよさのおかげで、われわれデザインチームが今までやりたくてもできなかったスポーティさの表現を、しっかり実現できたと思います」

 新しいプラットフォームと、3ナンバーサイズ化によって、「伸びやかさ」や「抑揚のある面」といった、質感の高いデザインに必須とも言える要素を、より豊かに表現できるようになった新型カローラ。その一方で、先述したとおり、国内モデルはグローバルモデルよりもサイズが小さくなっている。

 セダンの場合、全幅で35mm、全長では135mmも違う。近年のカーデザインでは、抑揚の表現などもミリ単位で突き詰められていることが多く、このサイズの違いはグローバルモデルと同じデザインコンセプトを実現するうえでは、致命的な違いと言っても過言ではない。だが実車を見ると、グローバルモデルと変わらない抑揚感やワイド感が実現されているのがわかるだろう。

 とくに注目してほしいのは、リヤタイヤ上部にあるキャラクターラインが張り出した部分。上方からの光を受けて、ハイライトを醸すこの部分は、全幅の差がもっともハッキリ出る場所だが、むしろグローバルモデルよりも豊かに表現されていると言ってもいい。国内モデルのエクステリアデザインを担当した坂上元章さんは、次のように振り返る。

「デザイン開発の順番としては、まずグローバル全体としての方向性を決め、それがある程度固まった初期段階から国内モデルのサイズなどについても検討を開始しています。パッケージングがほぼ決まった段階ですし、グローバルモデルと共通の内装デザインに大きな影響を及ぼさないことや、衝突時の安全や歩行者保護などの要件に干渉しないなど、さまざま要件を守りながら検討する必要がありました」

「そんな制約も考えると、サイズを小さくして同じコンセプトのデザインを実現するというのは、たしかに途方にくれてしまうような話です。単純に縮めただけでは、華奢に見えてしまいますからね。そこで私たちがたどり着いたのは、『縮小』ではなく『凝縮』させるという考え方。単純に小さくするのではなく、魅力的な要素を凝縮し、それをさらに際立たせるためのプラスアルファの見せ方をデザインに盛り込むという考え方です」

 先述したリヤタイヤまわりの抑揚感は、その表現の代表格と言える部分。ドア断面の張り出しは縮められているが、下部のロッカー周囲の張り出し寸法はほとんど縮められていない。加えて、ドアに連なるホイールのフレア部断面は、「回転」をかけることで、抑揚の曲線自体はほぼそのままの形で維持されている。

 デザインチームの「コンマミリ単位」への挑戦は、このほか、さまざまな箇所で行われている。とりわけ、サイドドアからリヤ末端に抜けていくキャラクターラインの模索は、国内仕様モデルの質感の向上という、エクステリアデザインにとどまらない大きな恩恵をもたらした部分だ。

「開発当初は、ワゴンとセダンでリヤドアは別デザインになる予定だったんです。それはセダンとワゴンで、フロントからリヤに抜けていくキャラクターラインを別のデザインにしたかったからです。ワゴンはベントして、リヤまわりにつながるテーマに、セダンなら水平に抜けていくラインにしたいものです。リヤドアを共有にしてしまうと、ドア以降の限られた部分でその違いを表現せねばならず、そうなると曲線の変化も急激にならざるをえません」

「ですが、セダンとワゴンの作り分けのためのデザインデータを解析しているうち、ひょっとしたら同じリヤドアでも、セダンらしさとワゴンらしさをしっかり表現できるラインが描けるんじゃないかと考えるようになりました」(坂上さん)

 カローラツーリングについては、グローバルモデルとのサイズ違い以外にも、バックドアやリヤコンビランプは共有するという制約もあり、ディテールとの整合性をとることも必要だ。そんな厳しい条件のもとで検証を繰り返した結果、条件をすべて満たしながらセダンとワゴンで共有できるキャラクターラインが、プランビューでコンマ5mmという極小な範囲のなかでのみ実現できそうなことがわかった。坂上さんらは、このコンマ5mmの範囲で、さらに3種類のキャラクターラインを試作し、ついに最適解を見つけ出した。

 このキャラクターラインによって実現した、セダン&ワゴンでのリヤドアの共有化は、生産コストにも莫大なメリットをもたらした。そして新型カローラのインテリアを見ると、歴代モデルと比べて飛躍的に質感がアップしていることを確認できるが、その実現には、リヤドアの共有化が大きく寄与しているのは言うまでもない。

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