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高性能スポーツカーでも8000回転程度! なぜ市販車にはF1のような1万回転を超えるエンジンを積まないのか (2/2ページ)

高性能スポーツカーでも8000回転程度! なぜ市販車にはF1のような1万回転を超えるエンジンを積まないのか

市販車をレーシングエンジンのようにしたら普段使いで不便

 F1エンジンはもちろんのこと、レーシングエンジンの到達目標は、最高速でいかに相手に勝てるかにある。したがってエンジン諸元のうちで重要なのは、最大トルクではなく最高出力(パワー)だ。

 トルクはエンジンの瞬発力と解釈すればいいだろう。すなわち出足のよさや、力強さだ。人間でいえば、何キロの荷物を持ち上げられるかを想像すればいい。ディーゼルエンジンが象徴的で、低速(低い回転域での)トルクが大きいのはそのためだ。エンジン回転数の高さは関係ない。

 パワーは最高速度に直結し、意味するところは一定時間にどれだけたくさんの力を出せるかにある。すなわち、仕事の効率だ。人間にたとえれば、1時間で何個の荷物を運べるかであり、10個より20個を運べるほうが効率はいい。それは素早く運べることになり、つまり速度に関係する。小さな力でも短時間に繰り返したくさん出せれば、結果として大きな仕事の成果になる。

 そこに関わるのがエンジン回転数だ。

 エンジン回転を高くするには、ショートストロークといって、ピストンの上下動の距離を短くしなければならない。理由は距離が長くなるとピストン速度が高くなり限界を超え、回転を上げられなくなるからだ。

 エンジンの内部でピストンは、上死点と下死点では瞬間的に止まり、そこから急加速したらすぐに急減速することを繰り返し、上下動している。

 かつて日産自動車でレーシングエンジンの設計・開発に携わり、のちに東海大学で教鞭をとった林義正さんによれば、そのように激しく上下動するレーシングエンジンのピストンの平均速度は、毎秒29mが可能だと述べている。時速に直すと104.4kmに達する。このあたりが、ピストン速度の限界と考えられる。

 一方、市販エンジンでは、たとえスポーツカーであっても、レーシングエンジン並みのショートストロークにしたら、発進の際のトルクが足りずエンストを起こしかねない。速さが魅力のスポーツカーとはいえ、日常的には市街地での信号待ちなどで発進・停止を繰り返すから、普段の使い勝手を無視するわけにはいかない。

 そこで、十分なトルクを出しながら最高出力も上げるという両立をはかるため、たとえばホンダNSXは最高出力の出るエンジン回転数を毎分6500~7500回転としている。ポルシェ911カレラSも最高出力の出る回転数は毎分6500回転だ。

 では、トルクよりパワー重視のF1などレーシングカーは、なぜエンストせず発進できるのか?

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