
この記事をまとめると
■ホンダが新たに投入した軽EV「N-ONE e:」に試乗
■高剛性ボディと静粛性に加えて外部給電機能で「走る電源」としての価値も確立
■295kmの航続距離と優れた操縦安定性でサクラ/eKクロスEVの好敵手となるだろう
ホンダが満を持して投入する軽乗用EV
軽自動車のBEVでは、すでに日産「サクラ」/三菱「eKクロスEV」が軽自動車として初の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高い評価を得ており、最前線を担ってきた。ホンダもHONDA eやN-VAN e:などのBEVモデルを登場させており、BEVにも積極的な姿勢を示している。
そして今回、新たな切り札として「N-ONE e:(エヌワン イー)」を投入してきた。ベース車両は既存のガソリン版N-ONEであり、N-VAN e:のコンポーネンツを流用することでEV化し、「軽EV第2世代」の標準を再定義しようという意欲が感じられる。
先行するサクラ/eKクロスのEVの航続距離がWLTCモードで180kmであるのに対し、N-ONE e:はホンダの伝統思想であるマンマキシマム/メカミニマム(M・M)を織り交ぜながら、295kmという長い航続距離を実現。EV軽自動車でもガソリンエンジン搭載車に迫る実用性と力強い走行性能を両立させている。
駆動用メインバッテリーは29.6kWhでキャビン床下に搭載。ガソリン車ではセンタータンク方式だった利点がバッテリー搭載面でも生かされている。サクラ/eKクロスEVは20kWh級バッテリーだった。よって、N-ONE e: はバッテリー容量で1.5倍近くをもたせ、航続距離でも1.5倍強という優位性が確保されているわけだ。
モーターの出力については、軽規格上の制限もあって64馬力だが、最大トルクは162Nmと強力だ。ただ、サクラ/ekクロスEVは195Nmと2リッターガソリンエンジン車並みの大トルクであることと比べると数値的には小さくなっている。
だが、ホンダのエンジニアによれば、最終減速比を11.0とサクラ/ekクロスEVの8.15より大きく設定したことで、実際の駆動トルクでは1720Nmが引き出され、サクラ/ekクロスEVの1534Nmを上まわっているのだという。
では、実際に走らせてみよう。発進時、アクセルを軽く踏むと、その瞬間からモーターは静かに応答を始める。従来のBEV車に多くみられた驚くような加速フィールは抑え込まれ、市街地でも扱いやすい特性が与えられているようだ。だが、駆動トルクの強さに支えられ、スロットルを踏み増せばいかなる状況でも加速できる余裕がある。
信号待ちからの加速でもストレスを感じさせず、登坂など高負荷域においても軽自動車とは思えないトルクの余裕を潜めている。今回は試していないが、最高速度は130km/hで、モーター回転数は2万回転に達するという。しかし、モーターの回転音はいかなる回転域、走行状態でもほとんど無音で、防振・防音対策が徹底され、室内は驚くほど静かで快適。走行感覚的な質感も高級車クラスのような出来ばえだ。
街なかの速度域(30〜60km/h)では、スロットルペダルの稼働ストロークが大きめに設定され、神経質な操作感から解放されている。アクセルの入力に対して穏やかにトルク制御され、再加速や追い越し加速も十分対応できる余裕があり、ストレスをまったく感じさせない。このあたりは「EVならではの滑らかで力強い加速感」としてしっかり特徴づけられている。
