WEB CARTOP | 独自の企画と情報でクルマを斬る自動車メディア

伝統なんてくそ食らえでポルシェを圧倒! 直6エンジンを捨てV8を積んだ禁断の「BMW M3 GTR」 (2/2ページ)

伝統なんてくそ食らえでポルシェを圧倒! 直6エンジンを捨てV8を積んだ禁断の「BMW M3 GTR」

この記事をまとめると

■E46 M3にレース専用V8を搭載した「GTR」が存在した

■ALMS制覇後はニュル24時間で連覇を果たした

■公道仕様も製作されゲームでも伝説となった異端のM3といえる

直6の伝統を捨てたBMWの決断

 2000年代初頭のALMS(アメリカン・ル・マン・シリーズ)は、ポルシェ911 GT3が席巻していた。BMWはE46型M3のベースカーとなるGTクラスで参戦していたが、3.2リッター直列6気筒(S54B32・343馬力)ではポルシェを倒すには力不足だった。そこでBMWモータースポーツが採った策は、型破りなものだった。

 2001年、オフィシャルチームであるBMWモータースポーツは、長年M3に引き継がれてきた直6エンジンをあっさりと放り捨て、バンク角度90度の純レース用V8自然吸気エンジン「P60B40」を搭載して参戦したのだ。そうして生まれたモデルが、「M3 GTR」だ。果たして投入されるや否や、M3 GTRは圧倒的な戦績でALMSのシーズン優勝を決めたのだった。

「P」というエンジン型式名の頭文字に違和感を覚えた人は鋭い。市販Mモデルのそれは「S」から始まる。この「S」はBMW M社製であることを示す記号だ。しかし「P」はBMWモータースポーツ製を意味し、より戦闘的な出自を示すアルファベットなのである。

 P60B40はV8自然吸気エンジンだが、市販モデル向けのBMW製V8とは根本的に構造が異なる。ドライサンプ潤滑方式を採用するとともに、一般的なBMW V8がクロスプレーン式クランクシャフトを採用するのに対し、このエンジンはフェラーリが採用することで知られるフラットプレーン式を採用している。2本のコンロッドが180度向かい合う構造は振動こそ大きいが、排気干渉が起きにくく高回転域での効率が高い。結果として、4リッターの排気量から490馬力以上を絞り出した。

 レース専用エンジンを搭載したマシンで参戦するには、市販車ベースのカテゴリーではホモロゲーション(公認取得)のために一定台数を市販する必要がある。そのために製造されたのが「M3 GTR ストリートバージョン」だ。

 E46型M3モデルにはすでに辛口仕様であるCSLが存在していたので、M3 GTR ストリートはいわば「超激辛」といった立ち位置だろうか。フロント・リヤバンパーには無骨な雰囲気のエアロパーツが付与されるほか、ボンネットの追加エアベント、固定式のリヤウイングという外観変更に加え、ボンネットの下にはもちろんP60B40型V8エンジンが収まる。ちなみに、「P」系統のエンジンで公道走行が許されたのはこのモデルが唯一となる。

 公道仕様ではデチューンが施され387馬力を発生し、シーケンシャルミッションを搭載するレーシングカーとは異なり6速MTを組み合わせる。ボディメイクにはカーボンファイバーを多用した結果、車両重量はわずか1350kgに収まっている。その価格は約25万ユーロ(当時のレートで邦貨換算約4120万円)。これは標準仕様のM3に対してじつに4倍以上という設定だった。

 公道仕様の生産台数は現在も公式には発表されていないが、最大でも10台前後とみられており、そのうち1台はBMWミュージアムに収蔵されている。

画像ギャラリー

WRITERS

モバイルバージョンを終了