
この記事をまとめると
■レアアースはHV・EV用モーターに欠かせない資源
■採掘よりも精錬工程で中国への依存度が高い
■資源確保と代替技術の開発が今後の課題となる
電動化時代に不可欠なレアアース
レアアースとは希土類元素のことだ。世界的に中国への依存度が高く、中国による輸出規制によって入手が難しくなったことで近年話題になっている。元素の種類を示す周期表には118の元素がある。そのうちレアアースは17の元素を指す。希少価値と名称からも推察されるが、じつは地球のもっとも表面に近い層(地殻)に存在し、貴金属といわれる金や銀より多く存在する。たとえば銅に近い量があるといわれる。
なぜ希少とされるのか。それはレアアースを含む鉱物から取り出すのが難しいためだ。
たとえば放射性のある鉱物に混ざっていると、取り出すための精錬で放射線への対処が必要になる。また、ゴミとして残る放射性物質をいかに処分するかも課題になる。
中国は1990年代初頭、石油に対抗できる国産資源として、レアアースを戦略的に扱うようになった。中国の埋蔵量は確かに多く40%ほどの比率になる。ほかにもベトナム、ブラジル、ロシア、南アフリカなどにも埋蔵されている。ところが精錬されたレアアースは、70%以上が中国の手による状況にある。
では、なぜレアアースが1990年代以降必要になったのか。クルマの例では、1997年にトヨタがハイブリッド車のプリウスを市販し、2009年には三菱が、翌2010年には日産がEVを市販するようになり、それらのモーターにレアアースが使われている。
永久磁石式同期モーターは、回転軸(回転子)の磁石にフェライト磁石の10倍もの磁力をもつ永久磁石を使う。それによって重いクルマを高速で走らせられるのだ。磁力を高めるためネオジムというレアアースを使うほか、そのネオジム磁石は高温になると磁力が低下するので、磁力を保持するジスプロシウムというレアアースも使っている。レアアースがなければ、HVもEVも生産しにくくなるのだ。
ただし、電磁石だけで駆動するEVモーターもある。日産アリアや、BYDとテスラの4輪駆動EVは、前輪側にそれを活用している。しかし電磁石は永久磁石式モーターに比べ大柄になるため、HVでは難しい。
ところで、レアアースの中国依存から脱却について、日本の領海にある南鳥島の海底5800mの泥にレアアースが埋蔵されていることが確認された。ただし、存在することと商業化に見合う原価を達成できるかは別で、今後の状況次第である。中国からのレアアースは採算に見合うので世界に広がったのだ。
中国のレアアースは、採掘に際し放射性鉱物から精錬することが不可欠で、残された放射性鉱物の処理にこれまで困っていた。ところが、それを原子力発電の燃料に使えることがわかった。それが、数年前に実証炉で臨界に達したトリウム溶融塩炉である。これは既存の軽水炉と異なり、電力料金の大幅な値下げが可能で、なおかつ東日本大震災で起きた福島第1原子力発電所事故を生じさせない安全性がある。いま南鳥島に保管しようとしている高レベル放射性物質の処理もできる。これこそ、次世代原子炉の最右翼だ。
つまり中国は、レアアースとその精錬に際し残ったトリウムを溶融塩炉で活用するという、2兎を得る状況にある。単にレアアースの確保をはかるだけでなく、安全な原子力発電をいかに新設し、自動運転やAIに備えるかという複眼的な戦略が求められている。でなければ、中国と競うことはできない。
