この記事をまとめると
■ル・マンで次世代電動M3の量産直前コンセプトを初公開
■4モーターと100kWh超バッテリーで800〜1000馬力級を狙う
■ガソリン版M3も並行開発し多様な需要への対応を継続
Mブランドの伝統を継承しながら電動化へ踏み出す
2026年6月12日、フランス・サルト・サーキット。第94回ル・マン24時間レースを前に、BMWはひとつのコンセプトカーを静かに、しかし確実に世界へ向けて解き放った。「Mコンセプト ノイエ・クラッセ」。これは2027年に登場予定の電動M3の、ほぼそのままの姿である。
タイミングも意味深だ。初代M3(E30)がフランクフルトモーターショーでデビューしてから40周年の節目にあたる2026年に、次世代M3の顔が初めて明かされたのだ。
Mコンセプト ノイエ・クラッセのフロントマスク画像はこちら
コンセプトのベースは今年ニューモデルとして登場した新型BMW i3セダンだが、前後ともに張り出したブリスターフェンダーによって車体は大幅に拡幅され、巨大なフロントスプリッターとリヤディフューザー、レーシングカー直系の大型サイドミラーが戦闘的な印象を加速させる。ボンネット中央には新設のV字型エアベントが刻まれており、フロントのラゲッジスペースが撤去されて代わりにモーター冷却系が収まっていることを示唆している。
フロントスポイラー、ディフューザー、ルーフに使われているのはナチュラルファイバーコンポジットという、亜麻繊維を用いた天然由来の複合素材だ。製造工程でのCO2排出量を従来のカーボンファイバー比で最大40%削減できるというこの素材は、BMWが量産モデルへの採用も明言している技術だ。
デザインにはE30 M3へのオマージュが随所に散りばめられている。クアッドヘッドライトのモチーフ, ブリスターフェンダーのフォルム、センターロック式ホイール。現代の解釈で再現されたこれらの要素は、E46 CSLを彷彿とさせるダックテール型トランクリッドと組み合わさって、Mのエンスージアストには刺さる構成だ。
BMW M3(E30)とMコンセプト ノイエ・クラッセ画像はこちら
パワートレインは前後各2基・計4基の電動モーターと、M専用の100kWh超バッテリーパックで構成される。このバッテリーはi3の標準仕様とは別開発で、急速放電・急速充電に対応した専用の化学的組成を採用しているとされる。最高出力は未公表だが、800馬力は確実とされる。
インテリアも見どころが多い。センターコンソールには「ハート・オブ・ジョイ」と名付けられたスーパーコンピュータが鎮座し、ドリフトモードやトルクベクタリングを含む多彩なハンドリング特性をリアルタイムで制御する。
Mコンセプト ノイエ・クラッセのインテリア画像はこちら
床下バッテリーのぶんだけ着座位置がガソリン仕様のM3より高いのは避けられないが、BMWはその制約と向き合いながら最適なパッケージングを模索し続けている様子だ。
BMWは電動M3(ZA0)と同時進行で、ガソリン(おそらくハイブリッド)エンジンを搭載した次世代M3(G84)の開発を続けており、2028年の投入を予定している。「市場が決める」という姿勢は大胆だが、電動化への移行を強要するのではなく選択肢を残すというアプローチは、むしろ誠実ともいえる。
2027年にはM3と同じクアッドモーター構成のX3 Mエレクトリックの投入も予定されており、2028年にはX5 Mの電動版も控えているという。BMWのMディビジョンが、電動化という地殻変動を前に動き出したのだ。