
この記事をまとめると
■タンクローリーはガソリンなどの液体を運ぶトラックだ
■フロントにタイヤが2輪付く前2軸という構造が多い
■液体の特性と重量物を運ぶ背景から前2軸のトラックが用いられる
タンクローリーの多くが前2軸な理由
重い車両ほどタイヤの数が増える。これはトラックを見るうえで、かなりわかりやすい法則のひとつである。なかでもタンクローリーは特徴的だ。荷台に箱を載せているわけでも、荷物が外から見えるわけでもないのに、前側にタイヤが2列並んでいる車両が多い。あの前2軸という形にはちゃんと理由がある。それは液体を大量に積み、安全に走らせるための、きわめて実用的な構造であるということだ。
タンクローリーが運ぶものは、ガソリン、軽油、灯油、重油、化学薬品、食品原料、水などさまざまで、共通しているのは、まとまった量になると非常に重いということだ。たとえば水なら1リットルで約1kgになる。ガソリンや軽油は水より少し軽いが、それでも何千リットル、何万リットルという単位で積めば、車両全体には大きな重量が加わる。しかもタンク本体やポンプ、配管、各種安全装置もあるため、車両そのものの重さも無視できない。
そこで問題になるのが、重さをどの車軸で受け止めるかである。トラックには車両総重量だけでなく、1本の車軸にどれだけ重さをかけてよいかという制限がある。これを軸重という。車両全体の重さが基準内に収まっていても、前軸や後軸のどこかに荷重が集中してしまえば、道路や橋に過大な負担を与える。前2軸にすれば、前側にかかる荷重を2本の軸でわけて受け止められるため、大型で重いタンクローリーを法規に適合させやすくなる。
また、タンクローリーはタンクの形状も独特だ。箱型の荷台と違い、円筒形や楕円形のタンクを車体に載せるため、荷重のかかり方も一般的な貨物車とは異なる。積み荷を前後に細かく置き分けるのではなく、決められたタンク室に液体を入れて走るため、設計段階で重量配分をきちんと考える必要がある。前2軸は、そのバランスを取るための選択肢でもある。
さらに、タンクローリーは液体を運ぶ車両であることも大きい。箱車の荷物なら、荷締めをすれば基本的にはその位置にとどまる。しかし液体は、発進、ブレーキ、カーブ、坂道でタンク内を前後左右に動こうとする。もちろんタンク内部には防波板と呼ばれる仕切りがあり、液体の揺れを抑える工夫がされている。それでも、重い液体が車内で動くという性質は完全には消えない。前2軸にして接地面を増やすことは、制動時や旋回時の安定性を高めるうえでも意味がある。
とくに燃料を運ぶタンクローリーでは、安全性への要求が高くなる。ガソリンや軽油は、万一の事故で流出や火災につながるおそれがあるからこそ、単にたくさん積めればよいのではなく、しっかり止まる、安定して曲がる、姿勢を崩しにくいという性能が重要になる。前2軸車は構造が複雑になり、タイヤや足まわりの点検箇所も増えるが、大重量を受け止める余裕をもたせやすいのだ。
もちろん、すべてのタンクローリーが前2軸というわけではない。小型や中型の配送用、積載量が比較的少ない車両、狭い道を走ることが多い車両では、前1軸のタイプも使われている。つまり前2軸は、タンクローリーの決まりではなく、大型で重い液体を効率よく、安全に運ぶために選ばれやすい形なのだ。前にタイヤが多いのは、重さをわけ、道路を守り、危険物を安全に届けるための、理にかなった答えなのである。
