WEB CARTOP | 独自の企画と情報でクルマを斬る自動車メディア

ポルシェ911のエンジンは350馬力でブレーキは1200馬力! レーシングドライバーが語る「制動馬力」とは (2/2ページ)

ポルシェ911のエンジンは350馬力でブレーキは1200馬力! レーシングドライバーが語る「制動馬力」とは

クルマを減速させるエンジンと真逆の動力源

「制動力」、すなわちストッピングパワーについてどのような認識を持っているだろうか。

 スピードが速ければ制動距離が延びる。ブレーキを酷使すればフェード現象などが起きやすい。この程度のことは免許を持っている人なら常識として知っているはずだ。しかし、中谷塾予備校を熱心に読み込んでくれている諸兄のなかには、”制動馬力”という視点からブレーキ全般を考えている人もいるだろう。

 クルマを加速させる動力源がエンジンであるなら、ブレーキシステムはクルマを減速させるエンジンと真逆の動力源であると考えることができる。つまりストッピングパワーは馬力で表すことが可能で、クルマを減速させるエンジンと真逆の動力源物理の法則に則ったシステムであることがわかる。

 構造が複雑で重く、燃料が必要なエンジンに対し、シンプルなシステムで大きな減速Gを引き出せるブレーキシステムは、じつは優れた熱効率を持っていると言えるのだ。たとえば、350馬力のエンジンを積むポルシェ911のストッピングパワーは概ね1200馬力である。それは物理学的な計算で導かれる数値だ。

運動エネルギーを熱に変換して大気中に放出

 なぜ車輪を止めることができるのか? その本質は摩擦力とエネルギー変換にある。走行中の車両は運動エネルギーを持っており、そのエネルギーは速度の2乗に比例する。質量mの車両が速度vで走行している場合、運動エネルギーは1/2mv²で表される。このエネルギーを短時間で熱へと変換し、大気中へ放散することで車両を停止させる仕組みがブレーキシステムなのだ。

 ディスクブレーキはホイールと一体で回転する鉄製のディスクローターに対し、キャリパーに固定された摩擦材=ブレーキパッドを押しつける構造を持つ。ドライバーのブレーキぺダル踏力はレバー比(伝達効率の比率)によって増幅され、マスターシリンダーで油圧に変換される。この油圧が配管を通じてキャリパーに伝達されてキャリパー内のピストンでパッドを押し出すことで摩擦力が発生する。摩擦係数μと押付力Nによって摩擦力F=μNが生じ、それに有効半径rを掛けたものが制動トルクとなる。

 ここで重要なのは”パスカルの原理”だ。密閉された流体中では圧力が均等に伝わるため、小さな力でも面積差を利用することによって大きな力に変換できる。

 仮にペダル入力が300N、ペダル比が4であればマスターシリンダーには1200Nが入力される。断面積が3㎠であれば約4MPaの圧力となり、これがキャリパーピストンに伝わる。ピストン面積が片側30㎠であれば1万2000Nの押付力となり、左右両側で2万4000Nとなる。そして摩擦係数が0.4であれば9600Nの摩擦力が発生し、半径0.16mで約1500Nmの制動トルクが得られる計算だ。

画像ギャラリー

WRITERS

モバイルバージョンを終了