タイヤのグリップはハガキ一枚分の面積の摩擦力! 理論派レーシングドライバーが語るクルマの性能を引き出す「摩擦円」理論 (1/2ページ)

クルマの性能を引き出すグリップ特性の理解

 言い古された表現だが、どんなに高性能なクルマも、地面に接しているのはハガキ1枚分ほどのタイヤ接地面だけだ。エンジン性能も、シャシー性能もタイヤなしでは性能を発揮できない。それだけに”中谷塾”でもつねにタイヤの重要性を説いている。

 タイヤの役割は①クルマの車重を支えること、②駆動力や制動力を伝えこと、③走る方向を定めることだ。とくに②と③においては「グリップ力」が重要であることがわかる。タイヤがグリップしなければ、走ることも曲がることも止まることもできない。氷上をサマータイヤで走るようなものだ。

 そこでタイヤのグリップについて、より深く検証してみる。タイヤのグリップ特性を知ることで、より安全にクルマとしての性能を引き出すドライビングが可能になるからである。

グリップ力の基本は路面とタイヤの摩擦係数

 タイヤのグリップとはタイヤトレッドの接地面と地面の間で生じる摩擦力だ。摩擦力はその力をFとするとF=μmg(クーロンの法則)という公式で表される。μはタイヤと路面間の摩擦係数であり、mgはタイヤにかかる荷重。同じタイヤでもμが小さければグリップは小さく、荷重が大きくなるとグリップ力は大きくなると考えることができる。

 タイヤがグリップ力を発揮するのは①粘着力、②凝集力(ゴムが引きちぎれまいとする抵抗力)、③ヒステリシスの3つ組み合わせであり、タイヤの接地面形状や面荷重、変形度合いなどで変化する。

 たとえば幅が広いタイヤの接地面積は広く、単位面積あたりの荷重が小さくなるので、より柔らかい粘着性の高いコンパウンドゴムを使用できる。逆に幅が狭いタイヤであれば面荷重が大きくなり、硬いゴムが必要になるが、硬いゴムは変形が少なくヒステリシスが小さいので大きなグリップ力が引き出せない。それは抵抗が小さいことになり、転がり抵抗の小さな燃費のいいタイヤとすることができる。

 このようにタイヤの基礎的なグリップ特性を知ることで、より目的に適したタイヤ選びと、ドライビング方法を知ることができるのだ。

摩擦円理論でグリップ力を振り分ける

 タイヤのグリップ特性を理解するうえでよく用いられているのが「摩擦円」理論だ。グリップの大きさを円で表し、「円内の前後、左右で使い分けることでタイヤグリップを上手に引き出しましょう」と解説されていることが多い。

 たとえば円の上方向に矢印を記し、制動力として表すと、矢印が円のフチまで伸びていたら左右に矢印を引けない。これは制動力に100%のグリップ力を使うとコーナリングフォースは右にも左にも引き出せないことを示している。もし減速時に旋回するならば、ブレーキペダルをやや戻し、制動力を80%や70%まで落として、その分、コーナリングフォースとして引き出せるようにするというわけだ。

 円のフチがグリップの限界であり、それを超えるグリップ力は提示されていない。グリップ限界を超えたドライビングは不可能と見て取れる。これで大方の理解はできるだろうが、じつはそれだけでは十分とは言えない。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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