
この記事をまとめると
■インドで新エネルギー車の販売台数がガソリン車を上まわった
■多様な選択肢を模索しながらもBEVへの移行が急速に進んでいる
■大気汚染や原油依存の低減に加え新産業や雇用創出も狙っている
インドで進む次世代モビリティへの転換
インドにおいて、CNG車、HEV、BEVを合わせた新エネルギー車が、販売台数でガソリン車を抜いたとして話題となっている。これは2026年8月単月締めでの新車販売台数で起こったことで、報道によるとガソリン車の販売比率が40.85%だったのに対し新エネルギー車は41.95%となったのである。
スズキはインドで牛糞をもとにしたバイオガスを精製するプラントを開所し、そこで作られるバイオガスをCNG車の燃料用に生産・販売している。インドのマルチパスウェイは幅広いものがその対象となっているが、それが社会の混乱を招いてもいる。
インド政府はガソリンについてもエタノールを20%混ぜた「E20」の供給を義務化しているが、E20を給油したことによるエンジン故障が多発しているとの報道がある一方で、政府はそのような事実は確認できていないとしている。オートエキスポ2023ではエタノールがもてはやされたが、2年後のオートエキスポ2025ではBEV祭りのごとき様相となった。急激な混合比率の引き上げや供給義務も混乱の一因としてあるのではないかと感じられる。
ちなみに、かつてインドはイギリス植民地下であったこともあり、ガソリンなど化石燃料の精製レベルは先進国並みで「中国の燃料より質は高い」と地元のひとは話してくれた。
さまざまな選択肢を用意するインド政府だが、やはりBEVに少々力が偏って入っているように見える。首都デリー市内を走る路線バスは急速にBEV化が進んでいる。庶民の足ともいえる三輪タクシー「リキシャ」は2027年以降BEVが義務化されるし、二輪車では2028年以降BEVが義務化となる。近年のガソリン高騰もあり、インセンティブの有無に関係なく、燃料費をセーブしたいユーザーが積極的にBEV二輪車へ乗り換えているようだ。
大きな道路では、道端に一般的な充電施設のほか、脱着式バッテリーに対応した電池交換ステーションなども用意されている。「たとえ快晴でもスモッグで青い空は拝めない」のがデリーだったが、ここ数年は雲の裂け目に青い空がチラホラ見えるようになったので、電動化によって間違いなく大気汚染が改善されているのを筆者は目の当たりにしている。
階層社会でもあるインドなので、各階層に合わせた負担のかからない新エネルギー車普及を模索していたようだが、その前にBEVに関するコストが技術進歩により改善に向かっていることもあって、ここのところ政府がBEVに傾倒してきているように見えるのかもしれない。
「有線電話の前に携帯電話が普及した」というのは新興国の携帯電話普及のたとえとして有名だが、14億ともなる世界一の人口を抱えたインドの自家用四輪車の普及はまだまだこれからともいえよう。すでに街なかにはICE車が溢れているので、「化石燃料車の前に~」とはいえないものの、成熟社会となった先進国よりはBEVが普及しやすい環境にあるといっていいだろう。
新興国では原油輸入量を削減したいという方向でも、BEVなど新エネルギー車の普及が進んでいる。青い空を取り戻すのと同時に原油依存も脱却したい、さらにはエタノール精製やBEV関連技術など新たな産業、そして雇用を創出したい。大国インドもほかの新興国同様にフットワーク軽く「次世代のクルマをどう動かすか」を考えているのだな……と、今回のトピックスを見ている。
