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500馬力のスーパースポーツでも120km/h走行に必要なのは「45馬力」だけ? レーシングドライバーが暴くクルマのエンジンの真実 (2/2ページ)

500馬力のスーパースポーツでも120km/h走行に必要なのは「45馬力」だけ? レーシングドライバーが暴くクルマのエンジンの真実

※本記事は雑誌「CARトップ2024年11月号」の記事を再構成して掲載しています

エンジンで大事なのは効率と出力特性

 クルマのエンジンは内燃機関である。ひと口に内燃機関と言ってもガソリンを使用するレシプロエンジンや、軽油で稼働させるディーゼルエンジン、タクシーなどに見られるLPGガス仕様に、近年は水素でまわす水素エンジンもある。レシプロエンジンには4サイクルと2サイクルエンジンがあり、また再び注目を集めているロータリーエンジンはガソリンや水素、アルコールなど燃料の自在性が高い。

 4サイクルエンジンにはオットーサイクルやアトキンソンサイクルといった稼働理論があり、さらにミラーサイクル、カルノーサイクルと多彩な技術的理論が存在する。いずれのエンジンも自動車の動力装置として使用する場合に重要なのは効率と出力特性である。

 カタログに記載されている数値はエンジンスペックとして排気量、シリンダー数、シリンダー寸法を示すボア×ストローク、そして最高出力と最大トルクとその発生回転数程度だろう。高効率化し、高性能を発揮させるための直噴化や過給機の装備、カムシャフト数なども記載される。

 こうした動力装置としてのエンジンの仕組みや特性、扱い方を知るのはきわめて重要なことだ。そのためには多くの知識が必要になる。

スポーツカーはパワーを トラックはトルクを重視

 エンジンを設計レベルで理解するには内燃工学を学ばなければならないが、熱力学を基礎とする内燃工学はきわめて難解な学問だ。物理学のエネルギー保存法則から熱力学の第一、第二法則に始まり、燃焼理論やエンジンの仕組み、各部の構造や応力解析、冷却に関する熱交換理論など多岐にわたる。

 そしてエンジンから引き出すパワーやトルクを理解して使いこなすのだが、パワーやトルクの違いについて明確に理解している人は少ないのではないだろうか。

 一般的にパワーは馬力として表示されるが、馬力=(一定時間になされる仕事量)と定義される。一方トルクは力であり、それは物理学的解釈の仕事そのものだ。

 よく例に示されるのがバーベルの上げ下げだ。一定時間に何回バーベルを上げ下げできるかを問われるのがパワーであり、バーベルを一度でも上げられる重さの最大値を問うのがトルクというわけだ。

 これをクルマに置き換えれば、一定時間にどれほどの距離を走行させられるか、つまり速度の速さを引き出すのはパワーであり、車両重量の大きなクルマを発進させる力を引き出すのがトルクというわけだ。スポーツカーはパワーで最高速を高め、トルクの大きなトラックは重量物の運搬に適している。

500馬力の高出力車も公道で使うのは50馬力以下

 最近のハイパフォーマンスカーでは最高出力が500馬力以上、最大トルク400N・m以上であることが当たり前のように語られるが、果たしてそのパワーはどのように引き出されるのか。たとえばA車が高速道路での法定最高速度120km/hで走るときに500馬力は必要なのだろうか。

 簡単な計算をしてみる。A車は車両重量が1500kg。転がり抵抗係数0.015で勾配はゼロとする。

 A車の転がり抵抗は1500×0.015=22.5kg、空気抵抗は1/2×空気密度(0.125)×(車速=33.3m/s)2×前面投影面積(1.90)×空気抵抗係数(Cd:0.30)で求められる[ただし数値は仮定]ので、1/2×0.12×33.32×1.90×0.30=79.0kg。∴(ゆえに)120km/hで走行するA車に働く走行抵抗は転がり抵抗+空気抵抗=22.5+79.0=101.5kgとなる。

 次に120km/h(秒速33.3m)で走るのに必要なパワーを求めると101.5kg×33.3m=3379.9kgm/sとなる。

 これは「パワー=動力は、ある時間内に行われる仕事量である」という物理学定義によるもので、仕事=力×進んだ距離であることから、101.5kg×33.3m=3379.9kgmの仕事を1秒間に行ったことになる。

 1馬力は75kgm/sであることから3379.9/75=45馬力となる。これは駆動輪の出す力で、駆動伝達系の機械的損失もあるのでエンジンはそれより大きな力を出す必要がある。しかし、カタログスペックで500馬力でも公道では50馬力以下の出力で走っている状態がほとんどだという実態が見えてくる。

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