※本記事は雑誌「CARトップ2023年9月号」の記事を再構成して掲載しています
挙動特性と操縦性に大きく影響するエンジンの搭載位置と駆動輪
積雪路で衝撃的な光景を目撃した。ミニバンのセレナが雪道の登坂路で立ち往生している。追い越しざまに目を向けると、後輪にタイヤチェーンを巻いている。ん? セレナってFFじゃなかったっけ?
そんなシーンに何度か出くわした。さらに積雪の模様を報じるニュース映像でも、FF車の後輪やFR車の前輪にチェーンを巻いて道路で立ち往生しているクルマが散見された。
本誌読者、とりわけ中谷塾予備校に目を通してくれている読者諸兄には冗談に思えるような事象が近年増えているようだ。レンタカーやカーシェアリングの普及なども一因かもしれないが、走らせるクルマの駆動方式くらいは把握しておいてもらいたいものだ。
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駆動方式を知れば、おおかたのクルマの挙動が予測できる。スマートな運転にも安全運転にも役立つのである。そこで今回は駆動レイアウトについて解説したい。
4タイプの駆動方式にそれぞれ4WDも派生
駆動方式とは、FFやFR、MR、RRなどと表され、それはエンジンの搭載位置と駆動輪を示す。FF(フロント・フロント)=フロントエンジンの前輪駆動、FR(フロント・リヤ)=フロントエンジンの後輪駆動といった具合だ。MR(ミッド・リヤ)はミッドシップ(車体中央近く)にエンジンを搭載し、後輪を駆動する。RR(リヤ・リヤ)はリヤエンジンの後輪駆動である。近年は4WDモデルもそれぞれに派生しており、その場合はFFベース、FRベースなどと表される。
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冒頭の、雪道を走る場合などでは駆動輪に滑り止めのチェーンを装着するのが常識だが、駆動輪を理解していないがゆえのミスと言える。
レアケースとして、駆動輪にスタッドレスタイヤを履いていて、操舵輪のフロントは夏用タイヤのままといった場合では、FR車の前輪にチェーンを巻くケースも考えられるが、目撃した車両は全輪が一般タイヤのままだったから立ち往生してしまったわけだ。以下、駆動レイアウト各々の特性を紹介しよう。
スバルの水平対向はFFでも縦置き
まずFFは、エンジンとトランスミッションを一体化したパワートレインユニットを進行方向に対して横向きに搭載し、前輪に駆動力を伝える。エンジンの回転方向と駆動輪の回転方向が同じで、また前輪に大きな荷重が加わるので駆動力を伝えやすく、効率がいい。また後輪へのプロペラシャフトなども必要ないので、車内や後方の車体パッケージングの自由度が大きい。現在、市販車の大半がFFレイアウトを採用している。
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デメリットとしては、パワートレインを横置きして搭載するためエンジンルームの横幅の多くを占拠してしまい、前輪の収まるホイールハウスが制約される。また駆動力を伝えるドライブシャフトのジョイント部への負荷が大きく、前輪のハンドル角を大きく取れないため最小回転半径が大きい。エンジンとトランスミッション部の重量が異なり、前輪左右にかかる荷重を均一化できないなどが挙げられる。
スバル車のようにエンジン+トランスミッションユニットを縦置きし、前輪駆動にすれば左右の重量バランスの均一化が可能で、スバルが謳うシンメトリー(左右対称)レイアウトとして良好なハンドリングバランスを得ることができるが、エンジンの回転方向と駆動輪の回転方向が90度異なるため効率が15%ほど悪化すると言われている。
かつて主流のFRはいまや絶滅危惧種
FRレイアウトではエンジンをフロントに縦置きし、一般的にはトランスミッションも連結されており、後輪までプロペラシャフトを通して後輪を駆動している。
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FRの場合、駆動輪となる後輪に大きな荷重がかかっておらず、発進時にトラクションを得にくい。また重いプロペラシャフトがキャビン床下を前後に貫通しているので振動・騒音の対策が重要となり、製造過程もFFより手間がかかる。
旧来、FRレイアウトは多くのクルマで採用されていたが、生産性やコスト、効率面でFFが優れることからFRは後輪駆動を好むスポーツカーユーザー向け、あるいは歴史と伝統を重視する高級セダンに採用されるにとどまるようになってしまった。