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【試乗】やっぱりスバルはMTがいい! オーストラリアでWRXのMT仕様に乗ったら日本に入れてほしい欲が止まらない (2/2ページ)

【試乗】やっぱりスバルはMTがいい! オーストラリアでWRXのMT仕様に乗ったら日本に入れてほしい欲が止まらない

この記事をまとめると

■日本にはCVTしかないWRXの「MT仕様」に豪州で乗った

■試乗車はWRX S4 tS Bスペックというスパルタンなグレード

■右ハンドルということもあり日本に導入してほしいクルマだった

EJ20とはまた違う「低速トルク」が豊富なエンジン

 ここ数年、ホントに円が安いというか弱い。「円安」というは易しだが、それは賃上げとか国内問題でどうこうというより、とりもなさず日本円で生活する我々の購買力がひたすら弱くなっているということ。だから今年初頭、北米やオーストラリア市場においてスバルWRXに6速MT仕様が登場した、そんな報せを聞いて臍を噛む思いをしたスバリスト&予備軍は少なくないのではないか。群馬産なのに、贔屓筋もいるけど煩さ方がひしめく国内市場をひとまずスルーして、海外の需要から応じていくという事情は、多少わからなくもない……。

 そこで今回は、日本と同じ左側通行・右ハンドルのオーストラリアで、そのステアリングを握るべく、ニューサウスウェールズ州シドニーへと試乗取材に向かった。飛行機で9~10時間となかなかに遠い国のはずだが、時差は±1時間とあって、この円安のご時世、2泊3日の弾丸出張というピュアきわまりない日程で。

 シドニー郊外のガレージで対面した試乗車両は、より正確には「スバルWRX S4 tS Bスペック」と呼ばれる仕様。全長4670×全幅1825×全高1465mmというボディ外寸は、既存のCVT仕様とまったく同様ながら、大型リヤスポイラーを備えている。ホイールは専用19インチでポテンザS007と組み合わされ、その奥、ブレーキにはダークなオレンジ色のブレンボの4ポットキャリパー&ドリルドディスクがおごられる。国内の売れ筋グレードである「STIスポーツR」が公道での操安性や乗り心地を重視しているのに対し、こちらtS BスペックMT仕様はサーキットも視野に入れた、スパルタン仕様であることを主張する。

 とはいえ搭載されるパワーユニットは、当然ながら4気筒2.4リッターのボクサーエンジンで、その最高出力は275馬力/5600rpmと、日本仕様と変わらない。ただし今回のオーストラリア仕様のスペックシートによれば、CVT仕様でも試乗車のMT仕様でも最大トルクは350Nm/2000-5200rpmとアナウンスされており、日本仕様の375Nm/2000-4800rpmよりもマイナス25Nmほど絞られているが、トルクをプラス400rpmほど高回転寄りまで維持する設定になっている。これはおそらく、エンジンの味つけ云々より、仕向け地の法規制に沿ったためにそうなっている、的な違いだろう。

 外観をひとまわり観察したあとは、インテリアに移ってみる。起毛素材、つまりウルトラスエードの黒を基調としつつも、赤ステッチに彩られた内装は、決して狭くはないがスパルタンな雰囲気を醸し出す。レカロシートの赤ステッチ&黒ウルトラスエードというトリム自体、「R-ブラック・リミテッド」と共通ではあるが、助手席の目の前のダッシュボードを覆うウルトラスエードには、「WRX」という赤いロゴ刺繍が施されている。

 当然のことだが、大きく異なるのはセンタートンネル上の様子ならびに操作系だ。シフトコンソール上は柔らかなブラックレザーで丁寧に覆われ、縦に赤ステッチがかかっている。シフトレバーはニュートラル位置で少し左に寄っていて、1-2速、3-4速、5-6速が往復となるHパターンの6速仕様で、リバースは手前側にすくい上げ式だ。さらにドライバー側の手前には、引いてくれといわんばかりの配置で、レバー式サイドブレーキが備わっている。やや左寄りオフセットが右ハンドル仕様として気になるかもしれないが、オーナーじゃなくてMT好きならニヤリとしてしまう、お手本のような配置といえるだろう。

 ちなみにドリンクホルダーも、CVT仕様のような左右並列ではなく、小物トレイを挟んで後方寄り配置で、前後方向に2本差しだ。

 クラッチを踏み込んでエンジンスタートのボタンを押すと、車内が低くくぐもったボクサーエンジン特有のアイドリング音に包まれる。軽過ぎず重過ぎずのクラッチペダルの反発を足裏に感じながら、筆者としては久々のクラッチミートを敢行した。スバルの4ドア・ボディのMT仕様とあって、古い記憶で低回転域でトルクの細かったEJ系の感覚を思い描いていたら、いい意味で肩透かしにあった。3名乗車でアイドリング近くから繋いだにもかかわらず、呆気ないほどスルスルと滑らかにWRXは進み始めた。

 まだ慣れないシドニー市内の道は、そこかしこに緩やかな丘が少なからずで、坂道発進の機会も多いのだが、オートホールドも利く。これなら初心者やMTにブランクのあるドライバーでも難なく入っていけて、扱いやすいことは確実だ。

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