
※本記事は雑誌「CARトップ2026年11月号」の記事を再構成して掲載しています
注文殺到中のラッコは重厚で滑らかな乗り味
BYDは海外メーカーとして初めて、日本独自の規格である軽自動車を真剣に開発し、まだ日本メーカーが成し遂げていない軽スーパーハイトワゴンのBEV、ラッコをいち早く日本に送り出した。
昨秋のジャパンモビリティショー2025にプロトタイプを出展して話題となったこともあり、発売直後から販売店には試乗予約が殺到。受注もいまだかつてないほど好調だという。果たしてラッコは、軽市場を揺るがす風雲児となるのかどうか。軽スーパーハイトワゴンの王者であるホンダN-BOXと、軽BEVの王者である日産サクラを駆り出し、一般道と高速道路で乗り比べてみた。
まずはラッコから。10.1インチの大型ディスプレイや、レザーのゴージャスな電動シートが印象的なインテリアは、ニョキっと突き出たシフトレバーや物理スイッチが残されているところなど、運転やBEVの初心者でも戸惑うことのないよう、ちょうどいい未来感に抑えられているように感じる。
日本人の手の大きさを研究して操作しやすいよう作られているとのことだが、たしかにハンドルからスッと手をずらした位置にレバーが配置されていたり、操作感もわかりやすい。試乗日は雨が降っていたが、ワイパーの作動音が静かなことにも感心した。
そしてスタートボタンを押す。シフトレバーをDに入れるといった操作ごとに、チャポッ、ピチャッと海や水を思わせる音の演出があるのはBYDならでは。ウインカーの音も独特なので、好き嫌いは分かれるかもしれない。
走り出しは重厚なクルマを運転しているような安定した接地感がありながら、余裕たっぷりでなめらかなモーター走行の上質感がこれでもかと伝わってくる。タイヤのクオリティが見合っていないのか、路面からのゴツゴツとした振動やノイズ、カーブでもう少し踏ん張ってほしいと思ったものの、さすがにボディの剛性感は高く、ブレーキが自然で頭が前のめりにならないところに感心。ステアリングもドシッとしてすわりがよく、上り坂でもアクセルを踏み足すことなく一定の速度を保つことができてラクだ。
走行モードをスタンダードからスポーツにすると、さらに瞬発力がアップ。高速道路の合流や車線変更などでも、軽ではなくもっと大きなクルマを走らせているような気分になってくる。速度が100km/h近くになると、風を受けている感覚が強まって直進安定性がもう少しほしいところだが、不安を感じるほどではなく、乗り心地は快適だった。
熟成の進んだN-BOXは高速でも安定した乗り心地
次にN-BOX。グレードはカスタムターボのFFモデルで、高効率パッケージやF1由来の技術を注入した頼もしい走行性能といった初代からのDNAを継承しながら、静粛性や剛性アップ、しなやかな足まわりなどをコツコツと熟成させた1台だ。運転席に座ると、遠くまで見通しやすいミニバン同等のアイポイントを確保し、パノラマ感にこだわった視界のよさが際立つ。ラッコほどのシートのゴージャス感はないものの、包まれるような心地よい室内空間となっている。
ターボエンジンは発進から余裕があり、伸びやかな加速フィールが印象的。30km/hあたりからトルクがモリモリと湧き出てくる感覚で、パワーの不足をまったく感じない上質感がある。速度が上がっていっても、エンジン音はどこか遠くで鳴っているような”ちょうどいい”響き方で、軽のエンジン車として最高峰とも思える静粛性だ。
ギャップを乗り越える場面では、タイヤも使って衝撃を吸収しているようなしなやかな乗り心地をキープ。カーブではじわりとした荷重移動によって思いどおりのラインを描くことができ、ステアリングも適度に手応えがあってすわりがよく、フラフラせず安定して走ることができる。
高速道路に入ると、本線までの上り坂をグイグイ登っていく頼もしさとともに、背の高さを忘れさせるほどのガッシリ感に驚く。アクセルオフの減速感もすごく自然で扱いやすく、路面に吸い付くような接地感さえ感じるところは、さすが王者の熟成度だ。
