じつは品質に差はなかった! ユーザーメリットしかない「格安ガソリンスタンド」がいま淘汰されている理由 (2/2ページ)

元売り合併で仕入れが困難に

 仮に軽油の需要が増えているとき、それに合わせて増産するとガソリンが余り気味になる。石油を精製しているのは元売りと呼ばれる石油会社だけだが、そうして販売先を失ったガソリンなどの燃料は自社系列のガソリンスタンドではなく、専門商社に卸される。石油製品はある種の生ものであり、長期保存がきかないためだ。

 そうした余剰分といえる燃料のことを業界用語で「業転玉(ぎょうてんぎょく)」という。業転玉は卸値も安い。こうした余剰燃料を仕入れることで、いわゆる格安スタンドのビジネスモデルは成立していた。

 しかし、このところ元売り以外の看板をかかげたプライベートブランドの格安スタンドは減少傾向にあるという。その理由は単純。かつては日本だけで15社以上あった元売りが、現在では実質3社(ENEOS、出光・昭和シェル、コスモ)に統合されているからだ。こうした統合は、当然ながら生産効率の向上を目指したものであり、余剰生産である業転玉の発生も減らしている。つまり、格安スタンドのビジネスモデルを維持するのは難しくなっているのだ。

 ちなみに、ENEOSブランドを展開しているJXTGホールディングスは日本石油、三菱石油、九州石油、共同石油などにルーツを持つ日本最大の元売り企業であり、系列店舗数は1万3000か所と日本のガソリンスタンドの半数近い。当然、各地域での価格に対する影響力も強い。プライベートブランドの格安スタンドがゲリラ的に戦うのも難しくなっている。

 このようにさまざまな要素はあるが、基本的には石油元売りの統合が進んだことでプライベートブランドの格安スタンドはビジネス的に厳しくなり、その数を減らしつつあるというのが現状だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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