クルマの「肥大化」は「過度な速度追求」の結果! 無意味な性能争いをメーカーが「自制」する時代が到来した (2/2ページ)

ブツからないクルマ完成までは最高速度を規制するしかない

 これに対し、安全なクルマとして永年親しまれてきたスウェーデンのボルボは、かねてより交通事故による死傷者ゼロを掲げてきたが、目標とした年次に達成できないことを明らかにした。原因は、速度にある。したがって、ボルボは、ドイツも含め世界で販売する新車の最高速度を時速180kmまでにすると決断した。

 速度を追い求めることは、個人の自由の範疇だ。とはいえ、度を越した速度の追求は、単独事故だけで済まず他人を巻き込む恐れも高まり、ほったらかしていい話ではない。サーキット走行なら話は別だが、公道での速度にはおのずと適正な規範が求められる。

 また電気自動車(EV)の時代を迎えるに際し、やたらな高速走行は、バッテリーを過熱させ、走行距離を極端に短くする。ドイツのメルセデス・ベンツでさえ、EQCでは最高速度を時速180kmとし、それがEVとして適切な速度だと開発責任者は語った。

 速度への夢が無用だという話ではない。しかし、必ずしも公道でなければ意味がないということではなく、たとえばドイツのポルシェは、世界にエクスペリエンスセンターを建設し、今年、日本の千葉県・木更津にも開所する。つまり、今日のポルシェのあらゆる性能を存分に堪能するには、公道以外の適切な場が必要だということを示している。

 公道での無暗な速度の追求が、クルマの大型化と高価格化をもたらした。そろそろ、それは限界に達していると考えるべきだ。

 また、自動運転が完成し、ぶつからないクルマが生まれれば、小型で快適なクルマの価値が、より人々に注目されるのではないか。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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