突如「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」へ参戦の指令! 「国内Aライセンス」取得に若手編集部員が挑戦してみた (3/3ページ)

落ちたら編集部終了の危機! いよいよ本番の試験へ

 車検や装備チェックが終わったら、次は室内に戻り講習スタートだ。いい大人なのでわざわざ言うことでもないが、朝早いからといって居眠りは厳禁だ。なんといっても、この講習で解説したところがテストに出ることが多い。目にセロハンテープを貼ってでも、見逃せないし、一言一句聞き逃せない。

 講習では、「国内競技規則」という基本的なモータースポーツに関するルールの解説、「車両規則」と言われる競技に使用するクルマに関するルールの解説、最後に「付則H項」と呼ばれるレース中の旗などに関するルールの解説を行う講義が開かれる。それぞれ1時間半〜2時間ほどで、その後は実技試験、筆記試験という流れになる。

 クレバーレーシングさんでは、ホワイトボードを使って解説するほか、長年レース現場にいるからこそわかる実際に起きた事案に関する解説、旗の実物を使った説明など、非常に丁寧な講義となっている。また、”テストに出やすい”ところも「ここは出やすいので要チェックです!」と教えてくれた。ちなみに筆記試験は、大学のテストのように、前もって購入したモータースポーツハンドブックなどのテキストを閲覧できる。出やすいところをメモしておけば、お守りになるかもしれない。

 なお、この日の受講者は20人ほどいて大盛況であった。しかし、実際に競技に出る予定がある人は少ないようで、これはよくあることなんだそう。もっと言うと、80%ほどの人たちは筑波サーキットを走るのすら初めてとのこと。「Aライセンス」と聞くと、なんだか凄そうな資格ではあるが、それくらいの温度感でも十分取得できるのだ。年齢層は20代から60代と幅広く、男性が多めではあるものの、この日は女性の参加者もいた。

 3種類の講義を受けたら次はいよいよ実技だ。今回は15分×2回の走行枠があり、内訳としては最初が「サーキットトライアル」というB級ライセンスが必要な実戦、もう1枠が「実技試験」だ。

 内訳をもう少し詳しく説明しよう。じつはAライセンスを取得するには、Bライセンスが必要な競技に1回以上出場していないといけないというルールがある(例外もあり)。なので、今回の講習によって先ず1枠目に「サーキットトライアル」を受け、前述の条件をクリアし、2回目の枠で実技試験を受けるというのが、今回の流れとなる。なお、実技試験は主にレース中に振られる「旗」を見ているかどうかを確認するそう。

 この「旗」であるが、レースはもちろん、走行会でも「黄旗」や「赤旗」、「オレンジボール」は出やすい。参加者に注意を促す大切なシグナルなので、この試験内容に納得だ。そして、今回の主催者であるクレバーレーシングさんの試験の場合は、実際のコース状況に則った旗を出してくれるので、「試験だからわざと黄旗を出す」といったようなことはせず、ちゃんと実戦を意識した試験内容になっているとのこと。クラブによっては試験なので”あえて出す”場合もあるそうだ。

 なお、サーキットトライアルも実技試験も「何秒以内で走れ」といった条件は皆無。ただし、クラッシュは一発不合格(過去に横転などがあったらしい)なので、とにかく事故なく安全に筑波サーキットを15分間で何周か走り抜ければいい。

 ナンバー付きであれば参加車種は自由なので、軽自動車だろうがミニバンだろうがSUVだろうがなんでもアリなのもうれしい。当日はトヨタ・プロボックスやマツダCX-60もいれば、フェラーリ F360なんかも走っていた。

 今回は試験中、オイルを噴いてしまったクルマがいたので、「赤の縦縞のある黄旗」が実際に振られることとなった。これは「先のコース上に、オイルがあり路面が滑りやすくなっていることを知らせる意味」を持つ旗。なので、レースならまだしも、試験なのでそこで頑張って、滑りやすい路面を全開で走る必要はない。今回の参加者はみんな旗を見ていたので、このトラブルでスピンするような車両はいなかった。最後にチェッカーが振られ、実技試験は終了だ。

 走ったあとは、元の部屋で筆記試験を受ける。問題数は30問で、制限時間は30分だ。筆者はとにかく頭がよろしくないので、澄ました顔をしつつもこのときはかなり緊張していた。実技は問題なかったはずだが、ここで落ちたら編集部の皆勤賞記録が終わってしまうプレッシャーはかなりのもの。それになかなかな金額となる参加代と試験代も払っている。落ちてもお金は返ってこないのだ! 何度もテキストと睨めっこし、普段の仕事以上に丁寧に見直しをして提出した。

 提出後、採点などを行いついに結果発表を迎えた。気になる結果は、クレバーレーシングさんが今年開催した講習会では初となる全員合格であった。これには室内に歓声が上がった。そしてこの瞬間、ボンクラ井上もパーっと気が軽くなった。「とりあえずこれで4耐に出場はできる。助かったぞ!」と。

 そして最後にもうひとつ、筆者にはうれしい案内があった。前述のサーキットトライアルでは、参加者のうち上位6名までは表彰があるとのことだ。とにかく試験に落ちるわけにはいかなかったので、そんなようなアナウンスがあったような気はしたが、すっかり忘れていた。そしてリザルトを見るとなんと、6位に名前があるではないか。

 事故をしては元も子もないので、安全第一で走っていたわけだが、結果としてこのような結果も得られたのは、棚ぼたといったところで何より。レース本番目前に幸先がいいではないか。

 と、いうわけで最後にこの表彰を受け、Aライセンスも無事に取得し、ボンクラ井上、20代最後の挑戦その1は幕を閉じた。後日、JAF関東本部まで出向き、紙でできた仮のAライセンスを発行してもらい、レース前の大きな準備は終了だ。

 Aライセンスの取得は、たしかにお金と時間はかかるが、クルマ好きであれば講習も楽しい内容ばかりであるほか、役に立つことも多いと感じた。そして、実技試験を経て取得できる資格なだけに達成感もあり、何より「Aライセンス」という響きが格好いいではないか。「俺、Aライセンス持ってるけど?」と、心を開いている友人間や家族程度の範囲であればきっとドヤれるはずだ。

 国内では、「N-ONEオーナーズカップ」「ヤリスカップ」「ロードスターパーティレース」「86/BRZレース」といった、Aライセンスが必要なワンメイクレースも多数開催されている。費用は掛かるが、誰でもレーシングドライバーになるチャンスと環境が日本にはある。車両の準備など、正直かなり大変だが、筆者も「なにかに出てみたい!」と、せっかくライセンスを取ったが故に強く感じたところだ。どんどん使わないと勿体ない!

 と、その前に開催目前に迫った「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」だが(本番までこの時点であと6日!)、ボンクラ井上は果たしてぶっつけ本番でどんな走りをするのか、そもそもトラブルなく走れるのか? リポートはまた別記事で近くお伝えするのでお楽しみに!

※講習の一部内容は主催のクラブによって異なります


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

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