【試乗】ルノー メガーヌR.S.最後の限定車が見せたFFの常識を打ち破る走り! (2/3ページ)

ファイナルエディションの名にふさわしい熟成度

 その背景には、熟成を重ねたメガーヌR.S.の実力が関係する。

 言葉では熟成のひと言になるし、どのモデルでも熟成はすると言われそうだが、その熟成の濃さが並ではない。なぜならビックマイナーチェンジなども行いつつ、注目はニュルブルクリンクそして鈴鹿サーキットを舞台に、そのときどきのFF最速ラップを求めながらクルマを鍛え上げてきたからだ。

 これが意味するのは、今のメガーヌはそろそろモデルサイクルとして有終の美を迎えるので、今がもっとも熟成され、旨みが凝縮された買いの時期でもあるということ。


メーカーもそれがわかっているので、最後に熟成エディションを限定で出してきた。それがメガーヌRS273ファイナルエディション。当時のニュルブルクリンクでのFF最速タイムを出した、273馬力仕様のエンジン搭載にちなんでのネーミングだ。

 このエンジンがまた良い。2700回転程度から本格的にターボ加速をするが、それ以下でも十分に力強いので、6速MTでの街なかドライブもシフト変則回数少なく苦にならない。しかもFF最速ラップタイムを出せるエンジンでいながら、アクセル操作に対する過敏な特徴がなく扱いやすい。

 しかし、RSボタンをおしてスポーツモードにするとすべてが変わる。ターボの最大加給圧も、ノーマル時の950mbarから1050mbarになり、5000回転以上の伸びが鋭くなる! しかも、野太さと抜けの良い音が調和した絶妙の排気音に、大量の空気の移動を感じさせる吸気音まで混ざり、とても刺激的なのだ。この音を楽しみたいがゆえに、アクセルを積極的に踏みたなる。

 しかも、前述した癖のないハンドリングがあるので、アクセルを踏めてしまうからタチが悪い。一般道では強い自制心で走行ペースを抑えることが大切であり、アクセルを踏んだ際の気持ち良さを知っていると、逆にストレスを感じるケースがあるかもしれない。


また、それだけ積極的にアクセルを踏める背景には、シャーシ性能もの高さがある。いや、今まで述べたのはメガーヌの飛び道具的な魅力であり、本質はここなのだろう。フロントで発生した曲がる力を瞬時にリヤにも伝えて、クルマ全体が一体感を持って不安感なく曲がる動きを作り出す卓越したボディ剛性。この破綻しないという安心感があるから、豪快にクルマを振り回せるし、アクセルを踏んでいける。

 しかも、激しいアップダウンがあるなかで、路面まで荒れているニュル最速でイメージできる方もいるだろうが、足まわりがとてもしなやかであり、加えて開発コントロールタイヤであるミシュランのパイロットスポーツとの相性が絶妙。グリップするのは当然として、サスペンションに加えてタイヤが第2のサスペンションであるかのように柔軟かつ剛性を備えた粘り具合を持ち、荒れた路面や跳ねそうな場面でも路面を離さないのだ。


その激しい走りでも、手足を自由に操作できるセミバケットタイプのシート。ハードな走りでも、繊細なコントロールを可能にするブレーキタッチ。そもそも論で、フロントが左右20mm近くもノーマルのモデルよりも広くなった見た目の迫力など、述べたい魅力は多数ある。


最後に、思い返すだけでちょっと興奮してきた気持ち良さがあったこの世界を濃密に堪能したい方は、20万円高くなるが20台限定で設定されているメガーヌRS273パックスポールがオススメ。

 ファイナルエディションに対し軽量を極めたモデルで、ホイールにはロベルトマルケージニデザインの軽量鍛造を用い、マフラーはニュルアタックモデルが絶えず採用してきたアクラポビッチ製の軽量チタンマフラーになる。

 最初は見た目と排気音が刺激的になる程度だろうと軽視していたが、乗り比べるとホイール軽量の効果か、体感できるレベルで加減速レスポンスが異なり、加えてレッドゾーン直前まで鋭く吹き上がる高回転のひと伸びが違う。

 実際の購入を考えたとき、ナビが装着しづらい点が気になるが、スポーティドライブにおける走りの質を価値として見いだせる本質追究の方にとっても、コストパフォーマンスがとても良いモデルだ。

 (写真:増田貴広)

※ボディカラー赤:ルノー メガーヌR.S.273ファイナルエディション
ボディカラー黄:ルノー メガーヌR.S.273パックスポール


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