凹んだクルマを直すのが板金だ。叩いたり、引っ張ったり、縮ませたりして、元の形に戻してやり、塗装して仕上げる。今では叩いて直せる職人は減り続けていて、パネルごとそっくり付け替えることが多くなってきた。
昭和30年頃に丁稚で修行した職人に聞くと「まず練習でヤカンを叩いて作ったもんだよ」なんていう言葉が返ってきてビックリしたものだ。
そこまではできなくても、叩けない時代になっているのは確か。そこで気になるのは、アルミボディはどうやって直すのかということ。
【関連記事】【今さら聞けない】クルマのボディの「モノコック」って何?
画像はこちら 粘りがあって叩けば比較的簡単に形作られる鉄板に対して、アルミは柔らかいので伸びたら伸びっぱなし。ただ叩くだけだと、ドンドンと伸びていくだけだ。
画像はこちら
さらに鉄板だと熱して急激に冷やすと縮むので、これを利用して凸部分を元に戻したりするが、アルミでは縮まないので無理。というか、バーナーであぶると溶けてしまうこともある。
画像はこちら
最近の流れでいうと、パネルごと交換になるのだが、ちょっとしたヘコミの場合や、ボディパネルが純正で供給されない場合はどうすればいいのだろうか。
じつは上手な熟練の職人であれば叩いて直せるし、切った貼ったで形も作れる。また、普通なら熱で穴が空いてしまうこともある溶接も、専用の機器などを使ってうまくやればできないことはない。
画像はこちら
つまり、どうしても直したい場合は昔ながらの職人を探すしかないのだが、直せなくはないと言える。ただすでに紹介しているように、熟練の板金職人は減るばかり。また直せたとしても、手間はかかるので費用が高額になることも。
画像はこちら
ちなみに某伝説のスーパーカーのアルミ製ボンネットをスペシャルショップで叩いて作ってもらったら、1000万円かかったという話しもあるほど。量産車ではそんなに掛かることはないが、一般に比べれば手間も費用もかかるのは事実だ。GT-Rやカプチーノなど、1990年代から、部分的にはかなり採用されているので、オーナーの方は注意してほしい。
画像はこちら