実用性はバイク以下!? 超不便でもメチャクチャ楽しいクルマ4選 (1/2ページ)

カップホルダーさえ備わらない走り一辺倒の無頼漢たち

 実用性は皆無ながら、刺激のカタマリのようなロードスターは意外と数多く存在する。これまで筆者が経験した「超不便だが超絶に楽しいロードスター」を4台選んでみた。いずれの4台も風の巻き込みは猛烈に激しく、カップホルダーひとつ備わらない不便なクルマだが、非日常性はどんなスーパーカーにも負けない魅力を備えている。

1)YES! ROADSTER 1.8T

 ドイツのベンチャー企業ファンク&ウィル社が製造したミッドシップスポーツカー。シャシーはオリジナルのアルミフレームで、1.8リッター4気筒ターボを始め、パワートレインの主要パーツはフォルクスワーゲン製。エントリーモデルの1.8Tは、パワステなしでブレーキもノンサーボであるなど、ほとんどレーシングカーのような設定となっている。

 運転フィールもレーシングカー的、というよりレーシングカート的で、すべてのフィーリングが超過激。直進安定性は悪くないが、ステアリングのゲインが過敏すぎて、わずかでも舵角を当てると瞬時に強めのヨーが発生。筆者が経験したナンバー付き車のなかで、もっとも高速レーンチェンジをするのが恐ろしいクルマとして記憶に刻まれている。

 ノンサーボのブレーキは蹴っ飛ばすようにして踏む必要があるほど重いが、その分制動力は強力でまさにレーシングカー的。フル加速からのフル制動では、レースカーの疑似体験ができる。

 5速MTのシフトフィールは剛性が高くて素晴らしいものの、バケットシートのサイドサポートが大きすぎてシフト操作時に肘が当たりまくることが惜しまれた。また、アクセルペダルが異様に奥に配置されているので、クソ重いブレーキの扱いにくさも相まって、ヒール&トゥの難易度は極めて高い。

 乗り心地はガチガチに硬く、市街地ではピッチングが激しいが、フレームの剛性が高いので不快ではなく、高速道路では意外と快適。音や振動については決して野蛮ではなく、むしろ文化的。この手のクルマとしてはコンフォート性が高いとさえ言える。

 路面からフォードバックされる情報量が多すぎて、乗り始めた当初はちょっとしたパニック状態に陥るが、意外とドライバーの身体に馴染むのは早く、普通に転がすぶんにはじつは従順。やがて扱いにくさはあまり感じなくなっていったのであった。

2)KTM・X-BOW(クロスボウ)

 オーストリアのバイクメーカーKTMの「X-BOW(クロスボウ)」。レーシングスペックの自社製カーボンモノコックシャシーにアウディ製の2.0TFSIエンジンをミッドに搭載したリアルスポーツカーで、車重はわずか790kgで240馬力。パワーウエイトレシオは約3.3kgと、超高性能スーパーカー並みの加速性能を発揮する。

 各部の緻密な作りや堅牢極まるボディ剛性感など、全体からドイツの高性能車を思わせる高品質感が備わっており、ドイツ車好きの人にとっては、じつに好ましい仕立てとなっている。

 走行フィールもまさしくドイツの高性能車的。高速巡航は絵に描いたようなオンザレール感に溢れており、多少乱暴な運転をしても挙動が破綻する気配は一切感じられなかった。徹頭徹尾の安定感が得られる一方、この手のクルマに求めたい野蛮な刺激にはやや欠けるとも言えるが、尋常ならざる加速力がそれを補って余りある刺激をもたらしてくれる。

 横Gやラップタイムなどが表示されるデジタルメーターを備えていたり、ホイールはセンターロック式であるなど、安定感の高い挙動も含め、レース参戦を前提としたマシンという印象が強かった。
840万円からという価格設定は、クルマの成り立ちや性能からすればリーズナブルと言える。(写真はX-BOW GT)


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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