運転技術に応じた保険料計算からローン審査まで! 単にクルマのスマホ化じゃないコネクティッドカーとは

単にネットワークの情報を入手できるシステムじゃない

 自動運転が注目を浴びる中、その周辺技術のひとつとしてコネクティッドカーがあります。これはクルマを情報ネットワークと繋いで(=コネクトして)、さまざまなサービスや管理機能をプラスしようというものです。注目を集めているのは、コネクティッドカーのプラットフォームとして、アップル社のCarPlayやグーグル社のAndroid Autoといった私たちに身近なブランドが参入していることで、未来感だけでなく、親近感もあるからかもしれません。

 しかしすでにクルマの多くはコネクティッドしています。たとえばVICS(道路交通情報システム)は、道路の混雑情報を受け取り、ナビ画面上に展開します。だから特別新しいわけではありませんが、そのコネクトの情報量が増え、濃密になることによって、より多くのメリットが得られるようになっていく、というわけです。

 それはiPhoneの機能をクルマ側から使うことができる、といった単純なものに限りません。より高度になり、ただ受け取るだけでなく、クルマの機能に直接的に働きかけるものも想定されているのです。それがつまり、自動運転との接点ということになります。

 たとえば自動運転からドライバーへの手動運転への切り換えには、ドライバー自身の準備を含めて10秒程度が必要だろうと言われています。ということは、リスキーな状況に追い込まれる10秒前には、自動運転の解除をドライバーに宣言しなければなりません。しかしどうでしょう、普段運転していて10秒後を察知することはできますか? そういう前方の情報をモニタリングするためにも、前方の状況をコネクトして得ることが不可欠なのです。

 コネクティッドカーには、自動運転以前に、もっと現実的なメリットを生む可能性があります。たとえばクルマがあなたの運転状況を判定することは簡単です。それをコネクトして保険会社にアップロードすれば、あなたの運転の危険度が明確になることでしょう。もし安全なドライバーと判定されれば自動車保険料金は安くなり、逆にリスキーなドライバーとなれば高くなるかもしれません。ペーパードライバーだからこそゴールド免許を獲得でき、自動車保険料も安くなる、という不合理なことは解消されることでしょう。

 また自動車ローンの審査も、コネクティッドカーの進歩によって不要になるかもしれません。現状の自動車ローンでは支払いが滞るとクルマが回収されます。しかし、その手続きにはさまざまな要素があり、簡単ではありません。そもそもクルマがどこにあるのか? オーナーは何時に帰宅するのか? 手間ヒマがかかります。しかしコネクティッドカーであれば、クルマの位置を割り出してエンジンがスタートできないよう設定して、そこに回収へ向かえばいいのです。回収コストが大幅に小さくなれば、それが細かくローン審査をする必要性は低くなります。

 コネクティッドカーは結局、常に監視されているような状況といえるでしょう。それはプライバシーの侵害になる可能性も考えられますが、盗難にあった場合には有効です。なにしろどこに居るのかが確認できるし、何ならエンジンが始動できないように制御することも可能でしょう。イモビライザーのような機能はそのままコネクティッドカーの通信機能に盛り込まれるのかもしれません。もっともハッキング技術はそうした新しい壁を意欲的に乗り越えるかもしれませんが。

  

 自動運転以前の、運転支援でもコネクティッドカーは有効です。たとえぱ混雑した状況で10台前に変な動きをするクルマが走行している、といった情報は、より高度な運転支援を安定させるためには重要です。追い越し車線で上り坂を速度維持できずにチンタラしているクルマは半強制的に左側車線にレーンチェンジさせる、といった機能が登場すれば高速道路の流れも効率的になることでしょう。

 コネクティッドカーの問題点は、やはりハッキングです。すでにハッキングされたことを理由にクルマがリコールされています。コネクティッドカーが進めば進むほど、ハッキングの被害は大きくなっていくのは間違いありません。コネクティッドカーでもっとも進化が求められるのは、間違いなくセキュリティなのです。


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