詐欺や暴言に酔客の対応! タクシー運転手が遭遇するトラブルとは

舌打ちしたり暴言を吐くお嬢様風の女性も……

 タクシーというのは密室の空間に、運転手とお客という第三者が居合わせる”異質な空間”となっている。最近ではタクシー運転手が乗客に話しかけない(させない?)ことを”サービス”のように採用するタクシー会社が注目されている。

 しかしこの声がけは、アメリカのスーパーやコンビニなどの商店でお客に「HOW ARE YOU?」などと声がけするのが、相手が不審人物か確認したり、仮に犯罪者であっても声がけすることで防犯につなげる意味で行われているのと同じような効果もあるので、事業者自ら声がけを禁止してしまうのにはかなりの違和感を覚えてしまう。タクシートラブル

 運転手ものべつくまなく声がけをするわけではない。軽く天気などの話をし、その反応で”いける”と思えばそのあとも話かけるし、どう見ても声をかける雰囲気(状態)ではないと思えば声がけはしないのだが、お客としても無言で走り続ける運転手より、話かけてくることで安心感も出てくるようにも見えるが……、世の中は複雑である。

 見た目で“その筋”の男性などは確かに怖いのだが、それだからというだけでトラブルが頻発するというわけではない。ある新人ドライバーによると、「最初行き先がよくわからなかったのですが、そのまま発車したら『道わかるのか!』と怒鳴られました。その後素直に『すいません、教えていただけますか?』と言うと、丁寧に教えてくれて、最後に『しっかり覚えろよ』と言って降りていかれました」とのこと。

 乗客とのトラブルの中心はやはり”地理不案内(道がよくわからないこと)”が原因のケースも多い。確かに東京とそのほかの新興国も含む諸外国の大都市のタクシーを乗り比べると、日本の運転手は地理不案内なケースが目立つ。ただ経験を積んで覚えていくというのも仕方のないことなので、運転手の新人教育では、”知らない場所だったら素直に聞けば大半はトラブル回避はできる”と指導されている。

 単に目的地へ行くだけでなく乗客それぞれでお気に入りのルートがあるので、とにかく経路確認も含めてお客に聞くというのが大原則となっている。

 あるタクシー運転手の経験のあるひとに聞くと、「男性よりはむしろ若い女性のほうが個人的には怖かったですね」と話してくれた。男性客は電車ではやや不便な場所への移動や、使い慣れたルートでタクシーを使う傾向が目立ち、極端なケースではないかぎり、時間や料金にはそれほぼ敏感な反応がないのが一般的のようである。

 一方で女性は”電車より早く目的地につきたい”という理由での利用も目立つとのこと。しかし通勤時間帯などでは、道路は混雑しているし、細い裏道は学生の登下校などもあり速度はあまり出せない。しかし……、「そんなときに後席の若い女性のお客様が『チッ!』と舌打ちしたり、『もっと早く行けねえのかよ』と罵声を浴びせてくることもありました。しかも見た目から”ヤンチャ”に見える女性ではなく、”お嬢様”的な雰囲気の女性が豹変するので怖かったですね」とのこと。

 罵声や舌打ちぐらいならまだマシともいえるが、車内暴力は冗談ではすまされない。こちらはエリートサラリーマンなど社会的地位の高いひと(男女問わず)が起こすケースが目だつ。つまりあからさまにタクシー運転手を見下しているのである。酔った勢いで引き起こすケースが目立つというのは、本音をさらけ出しやすいからとも見ることができる。

 ある関係者に聞くと、「タクシー事業者のなかには車内暴力事件には厳格に対応するところも目立ちます。刑事告訴を必ず行い、基本的に取り下げに応じないケースもあります」。

 たとえば、若いエリートサラリーマンが酔った勢いでタクシー運転手に暴力をふるったので警察を呼び刑事告訴の手続きをとったケースがあった。

 すると両親が示談交渉を申し入れてきたそうだ(たいていはこのパターン)が、けっして応じなかったそうだ。ある意味車内暴力の多くは、”ヘイトクライム(差別的犯罪)”といって良い性格を持っている。全部が全部示談に応じないわけではないが、厳格に対応しているのは確かである。”タクシー運転手”というだけで、相手を見下す人間がいるというのはまったく理解できない。

 なお泥酔したひとに関しては、道案内などができる付き添い人が同乗しないかぎり断ることができるが、実際はそうもいっていられない。泥酔客が寝込んでしまった場合は、運転手は声がけできるが、直接身体を触れて起こすことはできない(女性の泥酔客も多いので)。交番前に停めるか、警察署に乗り付けて警察官に起こしてもらうことになっている。

 これから年末にかけてはタクシー強盗も多発するシーズンとなるし、忘年会の季節でもあるので酔客も目立ってくる。ある意味タクシーのかきいれどきなのだが、トラブルも多発するシーズンなので、一度トラブルとなれば、その処理に時間をとられて商売もままならなくなるリスクも高くなる。

 タクシー料金を払わずに降りてしまう、”乗り逃げ”も制止する運転手の手を振り切るなどすれば、強盗傷害事件となる。なお乗り逃げされた場合には、その未徴収料金は運転手負担となる場合が多い。それもあり、料金徴収が終わらないかぎりはドアを開けないのが大原則となっている。

 車内に持ち込んだ高価な壺が急ブレーキで割れたとか、置き忘れた高価な品物がなくなったといって、賠償金をかすめとろうとする詐欺もいまだに後を絶たない。それもあり降りるときに、「お忘れ物のないように」と運転手は声がけしている。

 運転手の声がけは単なるサービスの一貫だけでなく、防犯につながる自己防衛としての意味合いが含まれることも多いので、そこだけはわかっていただきたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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