月販「二桁」レベルの不人気車が登場する理由とは?

少しでもイイクルマを作ろうとするチャレンジ精神の現れの場合も

 月販数十台と市場の規模からすると誤差の範囲としか思えないほど、少数しか売れていないクルマというのは、いつの時代も存在する。もちろん、もともと少数しか売るつもりがないスーパースポーツや超高級車がわずかしか売れていないのであれば、当たり前のことだ。たとえば年間100台が目標で、月に20台売れていれば、それは不人気ではなく、ビジネス的には大成功といえる。

 一方で、月販3000台を目指していたのに、結果として50台程度しか売れていなければ、それはビジネス的には失敗であるし、まさしく不人気車といえる。では、そうした不人気車はなぜ生まれてしまうのだろうか?

 結論からすれば、売れなかった原因はわからない。

 後付けで、売れない理由を指摘することはできるだろうが、そもそも売れないと明確にわかっているならば、そんな商品企画は実現しないだろう。「最初からわかりゃ苦労しないよ」である。市場調査が完璧ではないから、作り手が思ったように売れない「不人気車」が出てきてしまう。

 逆にいうと、ある程度マーケットのトレンドや商品性を理解できているはずの自動車評論家が「これは売れない」といったクルマが、スマッシュヒットをしてしまうケースもある。売れない理由もわからなければ、売れる理由もわからないのだ。もちろん、当たり外れのない手堅い商品企画というのもあるから「確実に売れる」という視点での市場調査や商品企画があることは否定できない。

 傾向として言えるのは、大ハズシと呼びたくなる不人気車が生まれやすいのは前例のないモデルということになる。いくら自動車メーカーの市場調査能力が高くとも、同じジャンルのモデルがなく、予測不可能なくらい情報が少ないとマーケットのマインドを読み違えてしまうことは避けられない。

 同じく、マーケットのマインドでいえば、地域ごとの特性という部分も無視できない。グローバルモデルという言葉を目にすることも多いが、じつは世界中どこでも変わらず売れているクルマというのは少ない。世界のベンチマークと呼ばれるようなクルマでも北米ではそれほど売れていないとか、中国で売れているのに欧州では人気がイマイチといったモデルは普通に存在する。

 つまり、海外では人気がある、しかしジャンルとしては前例の少ないクルマを日本に持ち込んだようなケースでは「大ハズシ」する可能性が大きくなるというわけだ。逆にいえば日本で売れていないからといって、そのクルマそのものが失敗とは言い切れない。

 海外で売れていれば、商品としては問題ないからだ。販売戦略としては失敗かもしれないが。しかしながら前例のある、確実に売れるクルマだけを作っているのでは自動車メーカーは生き残れない。常にチャレンジをしないことには市場は縮小する一方だ。たとえば、現代の日本市場で人気を集めている「ハイブリッド」、「ミニバン」、「スライドドアの軽自動車」などは、新たに生み出されたカテゴリーといえる。

 作り手にとって「不人気車」が出てしまうことは不本意だろうが、それはメーカーがチャレンジをしていることの証ともいえるだろう。そして、どんなに売れていなくとも、それを選んだオーナーにとっては最高の愛車であることは間違いない。不人気車だからといってダメなクルマというわけではない。その良さを理解できる人、ニーズに合致する人が少ないという話に過ぎないのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

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