新品では性能が発揮できない! スタッドレスタイヤの「慣らし」とは

同じタイヤでも雪上や氷上のグリップがまったく違う

 サーキットにおいては、基本的に新品=フレッシュタイヤの1周目が一番タイムが出る美味しいコンディションであることが知られているが、雪道を走るスタッドレスタイヤの場合はどうだろう?

 もちろん、1シーズン、2シーズンと使った中古タイヤよりは新品タイヤの方がグリップする。しかしじつはおろしたての新品タイヤの状態では、ベストパフォーマンスは発揮できない!スタッドレスタイヤ

 スタッドレスタイヤは、気泡を含んだゴムなどを採用し、吸水・吸着効果・柔軟性などを持たせているが、工場から出荷されたばかりのタイヤは、タイヤの表面に薄いゴムの「皮」が覆っており、肝心の気泡などがその「皮」の下に隠れてしまっているからだ。 

 このタイヤの「皮」は、ゴムを加硫し金型に流し込んで作る製造過程の関係上、どうしても金型から抜いたときにタイヤの表面に生じてしまう。そのため、この「皮」をむいてやらないと、スタッドレスタイヤの三大性能、「吸水」「密着」「ひっかき」性能が、十分に発揮されないことになる。タイヤの表面をひと皮むくのは、特段難しいことではなく、雪道を走る前に、ある程度の距離を走ればいいだけ。

 逆にいえば、そのための慣らし運転が欠かせないということになる。

 スタッドレスタイヤの皮むき=慣らし運転は、一般道を60km/h以下の速度で、200km以上走っておけば完璧。最低でも一般道のドライ路面で100kmほど走ってから雪道に行くのが望ましい(高速道路は路面が滑らかなので、スタッドレスタイヤのナラシには不向き。どうしても高速道路でナラシをする場合は、少なくとも200kmぐらいは走ること)。

 慣らし運転中は、もちろん急ブレーキ、急ハンドル、急加速などはNG。慣らしを終えたら、もう一度空気圧もチェックするのも忘れずに。時間も、気遣いも必要になるが、慣らし運転を行ったスタッドレスタイヤと、新品バリバリのスタッドレスでは、同じタイヤでも雪上・氷上のグリップがまったく違う。

 今シーズン、せっかく新しいスタッドレスタイヤを購入するのなら、本格的なシーズン前に余裕をもってスタッドレスタイヤを装着し、慣らし運転を済ませたうえで、雪道に備えておこう。

 ちなみに、スタッドレスタイヤだけでなく、じつは新品の夏用タイヤでも慣らし運転は重要。夏用タイヤの場合、皮むきというより、ゴムやカーカスコードを馴染ませ、一定の状態にするのが目的。80km/h以下の速度で100km以上走るのが目安だ。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

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