マツダの言う人馬一体って何? 2日間どっぷりマツダ漬けの勉強会で真相を探る!

安全運転にもつながる走る喜びは全モデルに備わっている!

 ユーザーに走る喜びを提供するマツダ。同社のクルマは“人馬一体”というキーワードのもと、人間中心に考えて作られている。今回、自動車雑誌編集部のみならず、女性誌やホビー誌などの編集部員を対象に、マツダのクルマづくりへのこだわりを学ぶことができる勉強会が開催された。WEB CARTOP編集部も参加することができたので、リポートしたい。

 今回の勉強会は、マツダ6(日本名:アテンザ)や、CX-5を生産している山口県にある防府工場の見学と、マツダ車の走る喜びを実際に味わう試乗会が、美祢自動車試験場にて行われた。まずは1日目、防府工場の見学から勉強会はスタート。

 マツダ防府工場の概要を簡単に説明しよう。現在は変速機を製造する中関地区と、乗用車を組み立てる西浦地区で構成される。1981年12月に中関地区が操業を開始し、翌年には西浦地区の第1工場が本格操業をスタートさせ、10年後には第2工場が操業を開始している。2017年の生産比率はアクセラ40%、アテンザ25%、デミオ18%、CX-3が15%、CX-5が2%。また、総数の75%は輸出向けの車両を生産する。

 マツダはモノ造り革新を進めており、ひとつの開発&生産コンセプトを全車種で共通化。このコモンアーキテクチャー構想により、同一ライン内で複数の車種を生産することが可能に。さらにはモーターショーなどに展示される1台限りのコンセプトカーが実際に商品化される際、その美しいエクステリアデザインをスポイルすることなく忠実に再現できるよう、プレス成形に徹底的にこだわっている。

 さらに、魂動デザインのイメージカラーであるソウルレッドを美しく魅せるため、そして効率よく塗装するためのプログラムも開発。クルマそのものの進化も当然だが、実際に生産する工場も、進化を遂げているのだ。

 そのほかにもラインで働くスタッフ自らが、より効率よく作業を進められるように工夫する「からくり改善」も積極的に行っている。組み立て部品の入ったパレットを効率よく運べるようにするなど、電動化はせずにすべてからくりのみで動くような仕組みを作っている。こうしてマツダ車がユーザーの手元に届くまで、さまざまなこだわりが投入されているのだ。

 勉強会の2日目は、こだわりが満載のマツダ車を実際にドライブし、体感する試乗会だ。デミオから最新のCX-8まで揃ったフルラインアップ試乗と、アクセラとそのライバル車を比較しながらマツダの人馬一体を体感するプログラムとが用意された。さらには、マツダ車で人馬一体をより色濃く反映させているモデル「ロードスター」の、歴代モデルをイッキ乗りできるプログラムも!

 走行の前に、まずは正しいドライビングポジション講座から。マツダはドライバーの能力を引き出し、素早く正確にコントロールができるよう、正しいドライビングポジションにもこだわっている。それをもたらすのは、シートの調整幅はもちろんだが、着座時に無理なく自然と足が置けるように、ペダルまわりのスペースを拡大。また、歩行状態と同じようにすねとふくらはぎを使うことで疲れにくくなるということで、アクセルペダルは従来の吊下げタイプではなくオルガン式と呼ばれる床から伸びる形状を採用する。

 これにより、アクセル操作の際にかかとを浮かすことがなくなるため、ペダルコントロールもしやすくなる。欧州車などに多く見られ、国産車でも一部のスポーツモデルや高級車にも採用されているが、マツダではエントリーモデルであるデミオにも装備されている。

 ちなみに腕の角度は100度くらいが理想的とのこと。腕をまっすぐに伸ばした際、手首がステアリングの上部に乗っかるくらいの距離が目安だ。

 正しいドライビングポジションを学んだあとは、いよいよ試乗だ。まずは人馬一体アカデミーと題し、アクセラとライバル車で走りの違いを体感するというもの。ライバル車は国産車と輸入車それぞれ1台ずつ用意され、同じように走行して違いを体感する。

 ワインディングコースでブレーキング、コーナリングなどの違いを乗り比べるのだが、体感できるほど違いがわかるのか? と不安だった。しかし、見事に違いがわかるのだ。比較した国産車は、加速などでは気持よく発進するのだが、少し唐突に感じる人もいるかもしれない。また、輸入車は低速域では、やはり少し硬い印象。乗り心地もそうだが、ステアリングの応答性など、速度域の高い領域でのドライビングでは安心感をもたらしてくれるかもしれないが、実際に乗り比べてしまうと日本の道には合っていない印象だ。

 対してアクセラは、いい意味で「普通」なのだ。それはいいところが無いということではなく、ごく自然にドライブができる、という意味でだ。カーブでは自分の進みたい方向へステアリングを切ると、切り足したり戻したりするような操作はほぼない。その印象は、速度が変わっても同じだった。また、下り坂では自分の走りたい速度を維持しようとブレーキなどで調整していると、即座にギヤがシフトダウン。自然とエンジンブレーキでその速度を維持しようと制御してくれるのだ。いかにドライバーの負担なく運転できるか。まさに“人馬一体”をわかりやすく体感することができた。

 続いては、歴代ロードスターを乗り比べることに。初代ユーノス・ロードスターが登場して約30年近く。ライトウェイトオープン2シーターというコンセプトは変わらず、世界中のファンから愛されて累計生産台数100万台を突破した、日本を代表するスポーツカーだ。

 今回、運良く初代から順に乗り換えることができた。初代は高回転まで気持ちよく回るエンジン、そしてゆったりとロールし、“ステアリングを切ってクルマを操っている”感を味わわせてくれるハンドリング性能。これはまさに現行モデルにもある感覚と同じである。もちろん、加速やハンドリングなどといったパフォーマンス性能は進化をしている。しかし、自在にクルマを操ることのできる楽しさは、約30年経った今でもまったく変わっていない。スポーツカーは速さだけではないんだ、ということを改めて認識させてくれた。

 最後は、最新マツダ車オールラインアップ試乗。今回用意されていたのはデミオ/アクセラ/アテンザ/CX-3/CX-5/CX-8/ロードスターRFという、新世代のマツダ車たち。かつてはサーキットだった美祢自動車試験場のフルコースを使って、各車の走りを体感するというもの。もちろん、車格による軽快さ、重厚感など走りには違いがある。しかし、コンパクトカーからハッチバック、そして3列SUVまで、基本的な走りの方向性は同じ。

 最初のアクセラで体感した”普通”に、そしてスムースに走らせることのできる感覚は、どのモデルにも備わっているのだ。これなら、免許取りたてのときにデミオで運転を覚え、慣れてきたらアクセラ、そして家族ができたらCX-5やCX-8といった具合に乗り換えたとしても、違和感を感じることがないだろう。人馬一体は速さだけではない。いかにスムースに、気持ちよく走らせられるかということなのだと。これは、必ず安全運転にもつながることだろう。

 この2日間で、マツダが”クルマ”に対してどう向き合っているのか、そして、開発スタッフから工場で生産するスタッフまで、全員がこだわりをもってエンドユーザーにいいクルマを届けたいという思いを持っていることを再認識。とても有意義な2日間を過ごすことができた。


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