バカ売れジャンルでも隣近所とカブる心配のない輸入ミニバン3選

使い勝手はもちろん走りがいいのもポイント

とくに小さいお子さんのいるファミリーにとって、愛車の候補として挙がってくる代表格はミニバンだろう。国産各社が力を入れているため、販売台数も多く街なかや隣近所で同じ車種を見かけることもままある。今回は「ミニバンは便利でほしいけど、お隣さんと同じクルマは……」と思っている人向けに、隣近所とカブらない輸入ミニバンをお薦めしたい。モータージャーナリストの青山尚暉さんが3台を厳選した。

1)フォルクスワーゲン ゴルフトゥーラン

 輸入ミニバンでお薦めしたい筆頭がVWゴルフトゥーラン。ゴルフ7ベースで全長4.5mほどの輸入ミニバンとしては比較的コンパクトなボディを持つものの、スタイリングはちょっと背の高いゴルフヴァリアントという感じでスタイリッシュ。

 走りはゴルフ譲りの高品質なもので、上質なドライブフィール、操縦安定性、快適でフラット感極まる乗り心地、高い静粛性、燃費性能、取り回し性、先進安全運転支援機能など絶品で、国産ミニバンとは一線を画す。

 後席は各座独立でダラリとは座れず、さすがに3列目席のひざまわり空間はギリギリだが、子どもや小柄な人なら乗り心地に大きな不満が出ることもないだろう。

 そんなトゥーランをノーマルモードで走らせれば、1.4リッターターボエンジンは低回転域から豊潤なトルクを発揮し、ゴルフヴァリアント比+180kgのボディを軽々と発進させる。トルキーでウルトラスムースなエンジンフィール、荒れた路面さえ心地よくいなすストローク感あるしなやかで上質極まる骨太な乗り心地は、ゴルフヴァリアントのハイラインとほぼ同質と言っていい。

 着座位置、アイポイントはかなり高く、いかにもミニバンらしい爽快な運転感覚をもたらしてくれるものの、重心の高さがもたらす腰高感など皆無に近い。そしてタイヤが発するロードノイズレベルは、遮音吸音性能の高さからか、あるいは乗員の耳の位置が高くなったためか、ゴルフヴァリアントより明らかに低く、全体的により静かという印象だ。

 もっとも、ゴルフヴァリアントでは十分な性能を発揮してくれるエコモードをセットすると、さすがに出足、中間加速はかなり穏やかになる。トゥーランの場合、ノーマルモードで走らせるのが基本と考えたい。

 また、山道ではステアリング操作に対して素晴らしくリニアに向きを変える曲りやすさ、重心の高さを感じにくいロール感が好ましい。感覚的にはほとんど視界の高いゴルフヴァリアントそのものなのである。

 素晴らしいのはシートアレンジ性で、2/3列目席を格納すると完全にフラットかつ広大なラゲッジスペースが出現し、大容量ヴァリアントに変身。つまり車中泊にも対応できる。コンフォートラインかハイラインが装備と乗り心地、価格のバランスでお薦めだ。

2)シトロエン C4グランドピカソ

 3列シート、7シーターにして、生活臭あるミニバンとは感じさせないデザイン性で選ぶなら、シトロエンC4グランドピカソだろう。とにかくどこから見てもスタイリッシュ!!

 5シーターワゴンのC4ピカソをベースに3列シート化されているが、前後のデザインなど独自のもので、頭上まで広がるフロントウインドウ、パノラミックガラスルーフによって室内の明るさ、解放感は自動車最高峰(オープンカーを除く)と言っていいほどだ。

 2列目席は3座独立で、キャプテンシートやベンチシートのようにダラリとは座れないが、居心地はまずまず。

 3列目席は頭上、ひざまわりスペースともに「緊急席」的だが、子どもの乗車、もしくは短時間の乗車なら問題ない。

 パワーユニットは1.6リッターターボと2リッタークリーンディーゼルターボが選択できるのも魅力。乗り心地はフランス車らしいしなやかさがあり、カーブでのロールこそ大きめながら、しっかりと路面を捉え続けるフットワークはさすが。乗り味までセンスがいい。

3)メルセデス・ベンツ Vクラス

 国産ミニバンで言えば、アルファード&ヴェルファイアの上級グレードに相当する価格帯の高級輸入ミニバンがメルセデ・スベンツVクラス。メルセデス・ベンツ唯一の3列シート、7人乗りのFRミニバンで、両側スライドドアを備えた標準、ロング、エクストラロングの3種類のボディを揃える。さらにアウトドア派向けのポップアップルーフ&2人分のベッドを備えた「マルコポーロホライズン」も登場。

 運転席に乗り込めば、インパネまわりは最新のEクラス並みの高級感ある質感とデザイン。シートは高めにセットされ、視界の良さと運転のしやすさを実感できる。

 3列目席は先代同様に取り外しが可能かつ、約59cmのスライド量を備えた贅沢感あるセパレートシート。全席椅子感覚のかけ心地は硬めのクッション性が特徴的で、ソファ的な国産ミニバンとは異なる、自然と背筋がピンと伸びるような仕立てがVクラスらしさ。

 驚くのは2列目席居住空間の広さ。ロングボディの場合、身長172cmのドライバー基準で頭上に26cm、ひざまわりにはなんと1列目席乗員がはるか遠くに感じられる最大約56cmもの空間がある。3列目席にしても大人がゆったりと座れるのだから、超実用的だ。

 ラゲッジは広大かつ使いやすさ抜群。開閉式リヤウインドウはもちろん、ラゲッジルームセパレーターと呼ばれるラゲッジを上下2段に分割でき、小物入れも備わるハードボードは立てることも可能でじつに便利。

 Vクラスの走りは、エンジンのディーゼル感こそ皆無とは言えないものの、わずか1400rpmから強大な最大トルクを発揮。加速感は車重を感じさせない余裕、力感に満ちたもの。19インチタイヤを履く乗り心地はまさにメルセデス・ベンツらしいドシリとした重厚感と、段差を乗り超えてもマイルドにいなすストローク感あるタッチを両立させる。高速直進性は矢のようで、クルージング中の車内は意外なほど静か。

 また、ステアリングの応答性の良さ&曲りやすさ、最小回転半径5.6mの小回り性の良さ、車高を感じにくい、カーブやレーンチェンジ、山道での路面に張り付くような走行感覚も運転のしやすさと安心感に直結。高速走行メインで実測約14km/Lという実燃費の良さや先進安全装備の充実度を合わせ、標準ボディでもプレミアムミニバンとしての機能性、存在感は十分だ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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