【試乗】日本車顔負けの使い勝手! ルノー カジャーのちょうどいい感が凄い (1/2ページ)

技ありラゲッジは国産車を凌ぐ便利さ

 昨年末に限定100台で先行販売されたルノー・カジャーが、いよいよ正式なラインアップに加わった。先に日本に上陸を果たしているBセグメントのキャプチャーと、日本への導入が途絶えているDセグメントへとサイズアップされた2代目コレオスの間を埋める、CセグメントのSUVという位置づけにある。ルノーカジャー

 そのスタイリングは、いかにも! な雰囲気を漂わせる多くのSUV達と見較べると、かなり特徴的。近年のルノーらしい大胆な曲線と曲面がボディの上できれいにうねる、ほかにあまり類を見ないようなエモーショナルなルックスだ。視界に入った瞬間に思わず目が引き付けられてしてしまうくらいインプレッシヴ。固定観念のワクに収まらない独特な雰囲気のあるフォルムに惹かれる人達にとって、この姿は大きな説得力となるに違いない。

 全長4455mm、全幅1835mm、全高1610mm。小さいとはいえないけれど、扱いにそう困るサイズでもない。その基礎となるプラットフォームは日産とのアライアンスによって共同開発されたCMF-C/D。日産のキャシュカイやXトレイルと基本を同じくしていて、それらと同様に本国では4WDモデルもラインアップされているが、4WDモデルはディーゼル+MTという仕様のみであることから見送られ、日本仕様は本国でもメインストリームになっている2WDのFFのみとなる。クロスカントリー系SUVではなく、もっとライトでデイリーなクロスオーバーSUV、ということがそんなところからも理解できるだろう。

 スタイリングも泥臭さとは無縁だが、インテリアも同じベクトルにある仕立てだ。近年のルノーらしくシンプルで機能的ながら、カッチリとスクエアだったりはしない柔らかで都会的なイメージのダッシュボードまわりは、助手席のセンターコンソール脇にアシストグリップがなければまるで上質なセダンのよう。

 たっぷりしたサイズの肉厚なシートは座り心地も快適、リヤシートなどは膝まわりのゆとりが大きいこともあって、サルーンより居心地はいいかも知れない。レザーの感触も含め、インテリアの質感もなかなかのものだと思う。

 意外だったのはラゲッジルーム。ルノーをはじめとしたフランス車はこうした部分は質実剛健というか素っ気ないというか、ぶっちゃけ、しっかり使える広さがあるんだからそれでいいだろ? みたいなところがある印象なのだけど、カジャーのラゲッジルームはちょっと違う。

 リヤシートは6:4の分割可倒式で、ラゲッジルームの両サイドにあるハンドルでラゲッジルーム側からそれぞれを倒すことができ、通常では527リッター、リヤシートを倒すと1478リッターのスペースを使うことができるわけだが、そこまではまぁ普通といえば普通。

ラゲッジルームの床面がボードによって上下に仕切られていて、下側にも収納できるのも、まぁ珍しくはない。フランス車としては異例なのは、その床面のボードが前後1枚ずつの2枚に別れていて、そのボードの高さを変えたりセンターに垂直に立てたりと取りつけ方を変えて、かなりフレキシブルな使い方ができる工夫がなされていることだ。

 たとえば前側は上下2段で後ろ側は底の深い1段、前後を垂直に立てたボードで仕切って前後を使い分ける、といった使い方もできる。ちなみにそのボードも、シンプルではあるけど安っぽいペラペラな感じはない。

 なるほど、フランスはヴァカンスの国。長い休暇や週末を楽しむために日々の苦行(=仕事)に渋々耐えながら暮らしてる、という冗句すらあるほどだ。このカジャー、家族や仲間同士で街を出てヴァカンスを満喫してまた街に戻る、という彼らにとってもっとも重要なテーマを心地好く満たすために作られたんじゃないか? なんて思えてくる。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
-

新着情報