セレナ・ノアヴォク・ステップワゴン、売れ筋ミニバン3モデルはどれが買い? 徹底比較で検証した!

3モデルとも人気の高いハイブリッドで比較する

 今はミニバンの人気が二極分化した。好調に売れるミニバンは、全高が1800mmを超える背の高いスライドドアを備えた車種で、とくに日産セレナ/トヨタ・ヴォクシー(姉妹車のノアとエスクァイアを含む)/ホンダ・ステップワゴンのミドルサイズ3車が注目される。そこでこの3車で、どれが最もオトクなのかを簡潔に比べたい。

 この3車に共通する特徴は、ハイブリッドが人気を高めたことだ。比較するグレードもハイブリッドを選び、セレナe-POWERハイウェイスターV(340万4160円)、ヴォクシーハイブリッドZS(326万9160円)、ステップワゴンスパーダハイブリッドGホンダセンシング(335万160円)とする。

 まず価格を比べるとヴォクシーが安いが、ほかの2車と違ってスライドドアの電動機能がオプションだ(6万1560円)。この装備を加えると総額333万720円になり、全車が330〜340万円前後で統一される。

 ミドルサイズミニバンはライバル同士の競争も激しく、似たような機能と装備を持つグレードが狭い価格帯に集中する。ボディサイズや価格が同程度だから、購入時の諸費用にもほとんど差が生じない。購入後の車検や点検費用も同等だ。

 ただし自動車税は異なる。ヴォクシーとステップワゴンのハイブリッドは、両車ともに直列4気筒2リッターエンジンを搭載するから、自動車税は年額3万9500円だが、セレナe-POWERは発電用1.2リッターエンジンだから3万4500円で済む。年額5000円/3年間で1万5000円の違いではあるが、セレナは負担が少ない。

 車両重量は3車とも1501〜2000kgに収まるから、自動車重量税は車検時に納める2年分で、3車とも1万5000円だ。購入時の自動車取得税と同重量税は、3車種ともにエコカー減税によって免税(100%の減税)される。

 JC08モード燃費は、セレナe-POWERが26.2km/L、ヴォクシーハイブリッドが23.8km/L、ステップワゴンが25km/Lになる。セレナがもっとも優れ、次いでステップワゴン、ヴォクシーと続く。実用燃費がJC08モードの85%、レギュラーガソリン価格が1L当たり140円(今は150円近くまで高騰しているが近年の平均値で算出)で計算すると、1km当たりの走行単価はセレナe-POWERが6.3円、ヴォクシーハイブリッドが6.9円、ステップワゴンハイブリッドは6.6円だ。1年間に1万kmを走れば、ガソリン代は年額6万3000円/6万9000円/6万6000円になり、3000円刻みの差額でほぼ横並びになる。3年間でも9000円刻みに収まる。

 このように購入時の価格、購入後の維持費を幅広く比べても、3車種で大きな差は付かない。

 そうなると数年後の下取査定が気になる。この水準は人気度に準じて変わり、1位がセレナ、2位は僅差でヴォクシー、3位は少し差を付けられてステップワゴンだ。ただし現行型の発売は、ヴォクシーが2014年と古く、ステップワゴンが2015年、セレナは2016年となる。

 現時点で新車として購入しても、売却時期によっては、セレナとステップワゴンが現行型なのにヴォクシーは一新されて先代型になっている可能性もある。こういった条件も考えると、総合的にもっとも効率良く売却できるのはセレナだ。

 クルマの機能はそれぞれ優劣が異なる。多人数乗車時の居住性がもっとも快適なのはセレナになる(ただし3列目のスライド機能を装着したグレードに限る)。1/2列目の快適性は3車とも横並びだが、セレナの3列目は後端までスライドさせると足もと空間がもっとも広がり、シートアレンジも多彩だ。

 3列目を畳んで荷物を積むときは、3列目が床下に格納されるステップワゴンが使いやすい。リヤゲートも工夫され、ステップワゴンは横開きのサブドアを備え、セレナは上半分だけが開閉する。いずれも狭い場所で使いやすい。

 動力性能はハイブリッドで見ると、1位がステップワゴン、2位がセレナ、3位がヴォクシーの順番だ。走行安定性は1位がステップワゴン、2位がヴォクシー、3位がセレナになる。セレナはプラットフォームの設計が古く、床が高いために高重心で安定性が下がった。乗降性も良くない。乗り心地と静粛性は1位がステップワゴン、2位がセレナ、3位がヴォクシーで、走り関連ではステップワゴンが有利に立つ。

 逆にヴォクシーは、現時点では緊急自動ブレーキが歩行者を検知できず、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも備わらない。リヤゲートの造りも平凡で、狭い場所での開閉性が良くないため、ライバル2車に比べて古さが目立つ。

 居住性などミニバンの機能で選ぶならセレナ、走りを含めた総合バランスならステップワゴンだ。それでもヴォクシーが好調に売れるのは、内外装の巧みなデザイン、ネッツトヨタ店の販売力、トヨタのブランドイメージによるところが大きい。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
-

新着情報