お得に買うなら在庫車狙いもあり! 昔とは違う今どきのディーラー在庫車事情

セールスマンにオススメ仕様を聞くと在庫車が出てくる可能性大

 日本の新車販売では、購入希望客と正式な注文書を交わしてからディーラーがメーカーへ生産の発注をかけるのが大原則となっている。

 しかしそれでは、初度登録(軽自動車は届け出)に必要な書類回収や、車庫証明交付にかかる時間なども含めて納車までに結構な時間がかかってしまう。それゆえ、可能な限り納期を短くする意味もあり、ディーラーの多くは、売れ筋モデルの売れ筋仕様を中心にメーカーへ先行して“見込み発注”し、自社で“ディーラー在庫(流通在庫とも呼ばれる)”としてストックするケースが一般化している。そのため商談中にセールスマンが「在庫のなかに……」というようなトークが出たとしても、これは“売れ残り”を意味するものではない。

 ただ最近のディーラー在庫については、必ずしもディーラーの見込み発注によるものではないケースも目立っている。業界事情通氏によると、「少々大げさな表現かもしれませんが、ある日突然メーカーからオーダーもしていない車両が届くそうです。しかも月末や増販期(夏商戦など)の後半追い込みのタイミングで届くそうです」とのことだ。

 多くのディーラーが今までも見込み発注して自社でストックしていると先ほど書いた。しかしトヨタだけは、デイリーでディーラーからの発注に対応したりすることで(発注日というのを決め、まとめてオーダーするパターンも業界にはある)基本的にディーラー在庫は持たせないようにしていたのだが、そのトヨタ系ディーラーでもプリウスやアクア、ノア系ミニバン3兄弟などの売れ筋モデルは、ディーラー在庫が目立ち、在庫車販売がメインとなっていると聞くようになった。

 ディーラーはメーカーから新車を仕入れているので、当然“支払い”が発生するのだが、その支払いが一定期間の間猶予されている。ディーラーはその間に当該車両を販売してメーカーへ支払いを行うのである。そのため、すでにディーラーが在庫として持っている車両のほうが値引き拡大スピードが早いのである。

 しかし、月締め近くにいきなりメーカーから行き場のない新車が届いても、小売りだけでなかなか捌くことはできない。前出の事情通によると、「そのまま在庫としてストックする前に、同じメーカー系列のレンタカー会社へフリート(大口販売)販売して、在庫処理を行うしかないとの話も最近の販売現場ではよく聞きます」

 最近は中古車展示場において、短期間でレンタカーとしての役目を終えた“レンタカーアップ中古車”というものが目立っている。中古車だけでなくカーシェアリングアップ車というものもあり、積極的にこの部分を強調して割安な価格設定で販売しているケースが目立っている。中古車としての再販ルートが充実してきたこともあってか、最近のレンタカーは年式の新しい車種が目立っている。つまり短期間で入れ替え(最長1年ぐらいが目立っている)が行われているのだ。

 しかしレンタカーやカーシェアリングへのフリート販売だけでは在庫が捌ききれないこともあるのか、最近は各メーカー系ディーラーでの中古車販売も目立っている。

「メーカーによっては、ディーラーが展示や試乗車などで自社登録して保有するための発注に関しては、かなり割安な価格で購入できるそうです。最近では展示車が少なく、だいたい試乗車となるのですが、半年ほどでディーラー敷地内に中古車として並びます。そのときの値付けは一般的な新車販売時の車両本体価格ベースで行われるので、ディーラーは新車を販売するより、かなり多い利益を得ることができるそうです」

 ただし、そのような中古車を当初希望してディーラーを訪れて商談していたところ、たまたま当該車が改良直後だったため、改良前在庫車がたまたまあり、見積りを出したら中古車より購入条件が割安となったということもあるので、同型車の新車で購入した場合での購入条件と見比べて買い得かどうかを判断したほうがいいだろう。

 過去には未登録状態で長期在庫車となるケースも意外に多かったが、今ではかなり早めに見切りをつけてディーラーが自社登録してオークションへ流すことも多いので、長期在庫車はかなりレアなケースとなりつつあるようだ。

 商談時に「おすすめ仕様はありますか」とセールスマンに聞いて、セールスマンが薦めてくる仕様は在庫車が多いと判断してよいだろう。

 今どきはメーカーによって程度は異なるが、生産現場でも売れ筋グレードの装着頻度の高いオプションを装着したモデルの生産が中心となっている。そのため、この“売れ筋ライン”から外れると、同じクルマでも値引き条件に大差がつくことも目立っている。

 メーカーが消費者の購買動向を見誤って、生産比重の高いモデルとは異なる仕様が売れ筋となったケースは、さらに値引き拡大では狙い目となる。

 メーカーは一度決めた生産計画を、実際の売れ筋ニーズと計画が異なったとしてもなかなか変更しない。つまり需要は少なめだが生産比重はそのまま継続されるので、市場へ放出すれば売れ残る可能性が高くなり、積極的な値引き拡大が期待できるのである。

 今どきの新車販売では単に納期云々だけでなく在庫状況に注目するのも、買い得条件で新車を購入するコツのひとつとなるのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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