燃費良好で人気のハイブリッド車! エンジン車と比較したデメリットとは

居住性や収納面でガソリン車に劣るモデルも多い

 時代はエコカー、そしてもっとも身近なエコカーがHVだ。プリウスが道を開いたHVカーは今や街に溢れている。コンパクトカーはもちろん、セダン、ミニバン、ステーションワゴン、SUVと、HVカー選びは自由自在。ガソリン代が高騰している今こそ選びたくなるってもんだ。ハイブリッドのデメリット

 しかし、待てよ。HVカーはけっこう割高でもある。たとえば売れに売れているMクラスボックス型ミニバンのトヨタ・ヴォクシーを例に挙げれば、JC08モード燃費23.8km/LのHV Xは301万4280円~。同グレードのガソリン車、16.0km/LのXは244万6720円だから、約55万円高になる。ということは、燃費差で元を取ることなど、よほど長く乗り、距離を走らないと不可能。これはほとんどのHVカーに言えることである。

 加えて、モード燃費(JC08モード)と実燃費の差が大きいと言われているのもHVカーだ。その点、出来のいいダウンサイジングターボやクリーンディーゼルなどはモード燃費と実燃費と実燃費の差が少なかったりする。ちなみにボクの愛車の1.4リッターダウンサイジングターボ車はモード燃費19.5km/Lにして、高速クルージングでそれを超えることもあるほどだ。

 また、HVカーはガソリン車にないHVシステム、大容量バッテリーを積むため、たとえば先代カムリはHVシステムを後席背後に積んでいたため、トランクスルー機能の一部が制限されていたし(新型は後席下に積むため、トランクスルーに支障なし)、エスティマはHVバッテリーを1列目席中央のセンターコンソール下に配置したことで巨大なセンターコンソールが鎮座し、ガソリン車と違い、1列目席のサイドスルーができなくなっていたりする。

 同じ車種にガソリン車とHVがある場合、HVはセンターコンソールボックスが浅くなっていることもあり、収納容量が小さくなるHVカーも少なくない。実用車は運転席周りの収納力が使いやすさに大きな影響を与えるから、購入検討時にはそのあたりもしっかりチェックしたいところだ。

 そうそう、オデッセイHVはHVバッテリーを1列目席下に積むため、車内空間への影響は最小限だが、2列目席に座るとフロア前端(1列目席の下)が、HVシステム搭載のため、なだらかに盛り上がっているのが分かる。が、ちょうどフットレスト代わりになってこれはこれで結果オーライなのだが……(プラス方向の希少な例)。 

 ガソリン車ではほぼ不可能な、HVカーの超実用ポイントのひとつが100V/1500Wコンセント。アウトドアではもちろん、災害時には電源供給車ともなり、東日本大震災の際には何台ものエスティマHVが東北に集結し、停電している被災地に煌々(こうこう)と明かりをともしたエピソードがある。

 とはいえ、100V/1500W電源を標準、またはOP設定できるのは、同じようなHVでも2モーターのバッテリーに余裕があるHVカーに限られる。たとえば廉価なHVカーのフィットHV、ソリオHVなどには設定されていない(設定できない)のだ。

 2モーターと1モーターのHVカーの大きな違いはそこだけじゃない。バッテリー残量がたっぷりあるときに、モーターだけで走れるEV走行の頻度、距離がまるで違う場合もある。HVカーに先進感、モーターだけで走行する静かさを求めるなら、高価にはなってしまうが、2モーターのHVを選ばざるを得ないという
わけだ。

 初期のHVカーは燃費をかせぐために、転がり抵抗最優先のタイヤの踏面が硬いエコスペシャルタイヤを履いていたため、乗り心地に問題のあるクルマもあった。最新のHVカーは「我慢しなくていいHVカー」だからそんな心配は無用だが、燃費により気づかうぶん、乗り心地は要チェックである。

 と、今回はHVカーのデメリットを中心に紹介したが、燃費性能はさすがに圧倒的だ。何しろボクの経験では、車高が高く(空気抵抗が大きい)重量級でもあるMクラスボックス型ミニバンでも、HVならモータートルクによる気持ちいい加速力を発揮しながら、走行シーンによっては20km/L越えが可能。コンパクトなHVカーなら25km/Lを越えた経験もあるほどだ。同ガソリン車との価格差は無視できないものの、足の長さは文句なし。

 東日本大震災の際、わが家の周りも被災し、上下水道が2カ月近くストップ。周囲のガソリンスタンドも被災し長期にわたり営業できず(営業しているところがあっても長蛇の列で、1台につき10リットルしか売ってくれなかったとか)、ご近所ともどもガソリン難民になってしまった。

 が、ちょうどガソリン満タンのプリウスがあり、1カ月間以上もの間、燃料を気にせず、無給油で遠くの銭湯や遠くの被災していない知り合いの家までトイレやお風呂を借りるため走り続けることができた“HVに感謝”の思い出がある。HVカーの航続距離の長さ、その威力をまざまざと実体験した出来事だった(最新のクリーンディーゼルも同様だが)。

つまり、HVには一部、ガソリン車に対するデメリットがあるにはあるけれど、それを上まわる大きなメリットも間違いなくあるということだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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